7月のお話  白猫

  昔、ある国に 王様と三人の王子がいました。

ある日、年頃の息子達を思った王様は、息子達を呼んでいいました。

 「わしは そろそろ 王位をお前たちの一人に 譲って、のんびりすごしたいとおもっているのだが、そうなると 毎日、きっと 退屈になるだろう。
 できれば かしこい犬などをそばにおいて、楽しく暮らしたいものだ。
 そこで、お前たちに 世界一 かしこい犬を探すことを命じる。
今日から 一年後に、世界で一番 かしこい犬を連れてきた者に、王冠を譲ろう。」

 三人の王子たちは かしこまりました、といって それぞれ 出かけていきました。

 上の王子は、すぐに 貴婦人たちのところへ出かけていき、世界一 かしこい犬を探すためには どうしたらよいか と たずねました。

 「街へいらっしゃいまし。街には たくさんの犬がいましてよ。」
と 貴婦人たちは いいました。 

 そこで、上の王子は 街にでかけていって、芸をする犬を かたっぱしから 買い集めたのでした。

 中の王子は、まず 船を買いました。なぜかというと、ずっと 遠くの国に、そこの全ての犬が芸をするという国があると 聞いたことがあったからです。

 たくさんの犬を連れて帰れるほどの 大きな船に乗った中の王子は、ずいぶんたって、ようやく 目指す国につきました。

 なるほど、その国の犬は どんな犬も いろんな芸をするので、王子は そのすべての犬を 船に乗せました。

 

 さて、末の王子は、どうしたかといいますと・・
末の王子は 王様の命令を聞くと、すたすたと 森に向かって歩き始めました。 

 森の奥には 不思議の森がある という うわさを聞いたことがあったからです。

 何日か歩いたあと、昼でも暗い 夜のような森についた王子は、しんとした暗闇の中を 少しずつ あるきました。時どき リスやきつねが そばをすり抜けながら 王子のからだに そっと 触れるのがわかりました。

 どのくらい歩いたでしょう。きがつくと 大きな老木が じっと こっちを見ています。森全体が 王子を じっとみているようです。

 ひきかえそうか どうしようか と 思っていると、いきなり 森が二つに分かれて、道の向こうに めずらしいお城があるのが見えました。

 お城は なんと 猫の形をしていたのです。

 末の王子は どうしたものかとおもいましたが、猫の形のお城には 行ってみたい気持ちもあり、それでは、と 心を強くして、でも おそるおそる、お城に通じる橋を渡り、思い切って お城の扉をたたきました。

 扉は 大きくて重そうなのに、すーっと 音もなく開かれ、中から 立派な服をきた 猫たちが、末の王子に向かって 深々とお辞儀をしました。

 王子は、ことさら立派そうな猫に招かれて、お城のなかに 入っていきました。

 王子の通された 明るい大広間には、毛並みの綺麗な 華やかなドレスをまとった 白い猫が 王子を待っていました。

 「ようこそ。よく いらっしゃいました。どうか ゆっくりなさってください。」

 

 白猫は とても 頭がよく、話しも上手でしたし、歌も 踊りも すばらしく、また いろいろなことを 知っていました。 
 
 白猫たちの温かいもてなしに、王子は 王様の命令など すっかり忘れて、毎日を 心から たのしく 過ごしていたのですが、
ある日、王子が 窓辺で外を見ていると、窓の下を 犬を連れた人が通り、王子は それで はっとして、あと数日で 王様からの命令の日が来ることを思い出しました。

 これは こまった、犬を捜すことを すっかり忘れていた、どうしよう。

 浮かない顔の王子を見た 白猫は、わけをたずね、王子は 王様の命令のことを 話しました。

 すると 白猫は にっこり微笑んで 言いました。

「ご心配にはおよびません。これを・・ お持ち下さい。王様に 犬のことを聞かれたら この卵を 割ってください。」

 白猫が 王子の手に持たせたのは 金の卵でした。

 王様の命令で 三人の王子たちが それぞれ 世界で一番かしこい犬を求めて旅立ってから、一年目の日になりました。

 国中の人々が お城の街に集まって、一番 かしこい犬を連れてくる王子は、だれだろう と 待っていると、お城に向かう道を、一番上の王子が ぴゅーっと 駆け抜けていきました。

 街中の犬を買い集めた上の王子は、たくさんの犬たちに 引っぱられて えらい勢いで お城に連れて行かれてしまったのでした。

 その次に やってきたのは、なにやら たのしい 一行で、それは 中の王子が たくさんの芸をする犬たちをつれて 現れたからでした。

 集まった人達は やんややんやの大喝采。まるで サーカスのような 犬たちの達者な芸に 大喜びしました。

 二人の王子たちが 王様に これでもか、これでもか、と つぎつぎに 犬を見せるものですから、王様は 途中から もう 犬を見るのも 嫌になり、うんざりした顔で だまって 犬たちを 眺めていました。

 とうとう 我慢できなくなった王様が、
「末の王子は どうした?まだ 戻ってこんのか?」
 と 言った時、末の王子が ひとりで、手に 金の卵をもって 現れました。

 ずっと 犬ばかり見てきた王様は、末の王子の持ってきた金の卵をみて 嬉しそうに、そして 不思議そうに 言いました。

 「はて?犬は どうした?」

 そこで、末の王子は 王様の目の前で 金の卵を 割りました。

 卵は ぱかんっと 二つに割れて、中から 小さな犬が飛び出しました。
王子は ほっとしました・・

 小さな犬は 卵から飛び出すと、飛んだりはねたりしながら、いろんな芸当をして見せます。飛び上がってくるっとまわったり、ダンスを踊ったり、どこからか はとを出して見せたり、最後には 王様に お辞儀をして 人懐こそうに 王様の膝に駆け上りました。 王様は もう とても うれしくて この犬こそ 世界一の犬だ と 言いました。

 

 しかし・・、王様は 本当のところ、まだ 王冠をかぶっていたかったので・・、もう一度 息子達に 問題を出すことにしました。

 「さぁ これで わしの毎日も 楽しくなることだろう。しかし、王になれば おきさきがいなくてはならない。お前たちの 誰一人、妻がいない。
 そこで、 これから 一年の間に、世界で一番 美しい娘を連れてきたものに 王冠を譲ることにしよう。」

 そのとき、王様は 上の二人の息子達に 特に いいました。
 「連れてくる娘は 一人だけだぞ、たくさん 連れてきてはならぬ。」

  三人の王子たちは かしこまりました、といって それぞれ 出かけていきました。

 上の王子は、すぐに 貴婦人たちのところへ出かけていき、世界一 美しい娘を探すためには どうしたらよいか と たずねました。

 貴婦人たちは やっぱり 街にいらっしゃいませ、街には たくさんの美しい娘たちがいますわ、と いい、上の王子は まず 劇場に行きました。

 劇場のボックス席に それは それは美しい娘がいるのをみた 上の王子は、すぐに その娘に 結婚を申し込みました。

 これから先、あちこち 探し回ったとしても これ以上の娘がいるかどうかなんて わからないから、と 上の王子は 思ったのです。

  中の王子は、まず 船を買いました。なぜかというと、ずっと 遠くの国に、そこに住む全ての娘たちが美しい国がある と 聞いたことがあったからです。

 再び、大きな船を買った 中の王子は、ずいぶんたって、ようやく 目指す国につきました。

 なるほど、その国の娘たちは 美しい娘たちばかりでした。中の王子は、なかでも 一番 美しい娘に 結婚を申し込み、いっしょに船に 乗りました。

 

 さて、末の王子は と いいますと・・ 

 末の王子は 迷うことなく、また 白猫の住む 森の城にむかって 歩き始めました。

 戻ってきた 末の王子をみて、猫たちは 喜びましたが、お城の主である あの 白猫は ことさら 喜んで 末の王子をむかえました。

 そして また 楽しい毎日を なかよく過ごしたのでしたが、ある日、窓の外を見ていた末の王子は、表を 一人の娘が通りかかるのを見て、突然 王様の命令を思い出しました。

 そこで いそいで 白猫に そのことを話すと、白猫は にっこり微笑んでいいました。

 「私をお連れ下さいまし。」

 たしかに、末の王子は 白猫が好きでした。いっしょにいると 本当に たのしいし、いつも 笑っていられるし、心が晴れやかになって 良い気分で だれにでも 親切にしたくなるのですから、ずっと いっしょにいたいと 思ってもいました。

 でも 相手は 猫です。 世界で一番 美しい娘を連れて来い といわれて、猫を連れ行けば きっと みんなの笑いものになります。

 末の王子が 困った様子でもじもじしているのをみても、白猫は だまって 微笑むばかり。

 そのうち、馬車の用意ができました、と おつきの猫たちが 知らせにきても、白猫は やっぱり だまって 微笑んでいます。

 末の王子は、とうとう 断れなくて、いっしょに 馬車に乗り込みました。

 色々考えてみましたが、やっぱり 白猫を 傷つけたくなかったのです。

 そしてまた、王様の命令で 三人の王子たちが それぞれ 世界で一番美しい娘を捜しに旅立ってから、一年目の日になりました。

  国中の人々が お城の街に集まって、一番 美しい娘を連れてくる王子は、だれだろう、どんな娘がおきさきになるのだろう と話し合っていました。

 お城の大広間では、王様の前に 上の王子の連れてきた娘と 中の王子の連れてきた娘が 並んでたっていました。

 王様は とても うれしそうでしたが、また とても 困ってもいました。
なぜなら 二人は どちらも それぞれに 美しかったからです。

  どうにも 困り果てた王様が、
「末の王子は どうした?まだ 戻ってこんのか?」
 と 言った時、末の王子が はい、ここに、といって 広間に入ってきました。

 そして、末の王子の後ろから 華やかなドレスを着た・・ 白い猫が!

 王様ばかりか 広間のだれもが びっくりして 声も出ません。

 ようやく 王様が 一体なにごとか と 尋ねます。
「王子よ、これは どうしたことだ?わしは 世界で一番 美しい娘を連れてまいれと言ったはずだ。それが なぜ 白い猫なのだ?
 お前は 猫と結婚するというのか?? 」

 上の王子と 中の王子は それぞれ 連れてきた娘たちといっしょに、笑い出し、それにつられて 広間中の人々が 大笑いを始めました。

 王様は 笑うどころの話ではありません。だんだん腹が立ってきました。

 しかし 末の王子は いいました。

 「父上、そうです。私は この白猫と 結婚したいと思います。なぜなら いっしょにいると とても 幸せな気分になりますし、私は この白猫を とても 愛しています。ずっと いっしょにいたいのです。」

 その言葉が終わる頃には 王様の顔は 余りのことに あかくなったり 青くなったり・・ しまいには ぶるぶる震えだして、大声で 怒鳴ろうとしました。


 そのとき、ずっと 黙って微笑んでいた白猫が すっと 末の王子の前にでてくると、つるりと 顔をなで、そして まるで 着物を脱ぐように 猫の皮を脱ぎ捨てたのです。

 皆が びっくりしていると、猫の皮の下から、今まで これほどの娘がいただろうか と 思われるような、美しい娘が 現れて いいました。

 「王子様、私を愛している、ずっと いっしょにいたいと思っていると おっしゃってくださって 本当に ありがとうございます。

 私は、ある国の王女でしたが、悪い魔法使いに魔法をかけられて、猫の姿になってしまったのです。

 猫の姿をしていても 私を愛し、いっしょに暮らしたいと思ってくださる方と出会わない限り、ずっと 人間には戻れないと 言われたのです。

 でも ここに、末の王子様が 私を妻に迎えたいと 仰ってくださいましたので、こうして 人間の姿に戻ることができたのです。」

 王様は 大喜び、まわりの人々も たいそう喜んで、皆で 拍手で 美しい姫君を迎えました。

 当の末の王子は・・ と いいますと、
口をあんぐり、言葉もなく 余りのことに びっくりして つったったままだったそうです。

 

 

 

  このお話は ご存知でしたか?

 先日、ある集まりのために 連れ合いと待ち合わせたとき、すぐちかくに図書館があって、雨宿りもかねて そこで待っていました。

 どうせ待つなら と 本の背表紙を眺めていたところ、子供のコーナーで、ちょっと かわった絵の本を 見つけました。

 それが このお話でした。

 私は これが 初めてだったのですが、これは 面白い絵本でした。

 そうだ、7月のお話しは これにしよう、と おもい、絵を見ながら ストーリーを憶えました。

 できるかな と思いながら、絵を思い出しつつ 書きましたから、所々 適当だろうと思います。
タイトルは そのままの「白猫」ですから、気になる方は さがしてみてください。

 もともとの話しには もうひとつ、王様の問題があるようですが、私の読んだ本には それは ありませんでした。 どんな 問題なんでしょうね。

 読みながら 書きながら・・、いつもながら 本当に「美しい」ということは そんなにも運命を変えるものなのかなー と、ちょっと 小さな苛立ちを かんじてもいました・・

 しかし・・ 王位を譲ろうという時に 犬だの 美しい娘だのって・・、そこに 国民が存在しないなんて・・ と おもいましたが、まぁ、昔々の貴族たちの、お集まりの時の暇つぶし話のひとつだったらしいですから、それをおもえば、民草のことなど これっぽっちも 思うなど、なかっただろうとも思えます・・。

 もちろん お話ですからね、本当の王様(国を司る人)は ちゃんと 民のことを考えて・・ だと思いますよ。

 あなたは どうおもいますか?

 

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