渡部誠一氏の作品  取り箸

 

不思議に 手に懐かしい

ずっと ずっと 昔、こんな風にして 葉っぱのお皿に盛り付けた記憶を 見つめる時・・

 

春の野辺には 
はこべやおおいぬふぐり たんぽぽやれんげたちが そよ吹く風に揺れながら

柔らかな沢山の浅い緑に包まれるようにして そこここの一面に咲いていた。

土手を下って 川の水を混ぜながら土を捏ね いくつものお団子をこしらえ・・

上手に つわぶきの葉っぱに乗せたり 椿の葉で包んでは
「はい、どうぞ。」「いただきます。」 「いかがですか?」「とても おいしいです。」 なんて・・

終われば 全部 水に流して その日が終わった

 

殆ど 重さも 温度も感じない その取り箸を手にして

ずっと ずっと 昔、こんな風にして 春の野辺にて 柔らかな日差しに遊んだ記憶・・

 



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