6月のお話  きんまり
 むかしむかし、あるところに、ひとりの王さまがありました。

 王さまには、うつくしい娘姫さまがたが、たくさんありましたが、なかでも、末の姫さまは、それはそれは美しくて 誰でもが 毎日 お目にかかりたいほどでした。

 この姫様は また愛らしく、王様からいただいた ひとつのきんのまりをとてもだいじにして 宝物にしておいででした。

 ある 夏の暑い日、お姫様は 森の冷たい水のこんこんと湧き出る泉のそばで、いつものように きんのまりを 上に放り投げたり とんとんと地面についたりして 楽しく遊んでおりましたが、ふと まりが手からそれたかとおもうと、ぽちゃんと泉に落ちてしまいまったのです。
 姫様は びっくりして いそいで みずにてをさしいれましたが、泉は深く まりは どんどん底のほうへ沈んでいってしまいます。

 「わたしのまり、わたしのきんのまりが・・!」
姫様は 悲しくなって ぽろぽろ涙をこぼして 泣き出してしまいました。

 そして なかなかおちてしまったまりがあきらめられなくて、長いこと 泉のそばで泣き悲しんでいたのですが、しばらくすると 泣いている姫様のそばで 声がしました。

 「もしもし、きれいなお姫さま、何がかなしくて そんなに目がつぶれるほどお泣きなのです?そんなに泣いたら 晴れた日の空のようなあなたの青い目が 夏の夕焼けのように真っ赤になってしまいますよ。」

 すえ姫さまは びっくりして 顔をあげ、声のするほうを見ました。
すると 泉の真ん中のあたりに、いっぴきの大きなかえるが ぬるっとした顔を半分水の上に突き出して どんよりした目で じっとこちらを見つめているではありませんか。 ほかには だれもいないし・・ では このかえるが 私に話しかけたの?

 かえるは 姫さまの気持ちを読んだかのように、にやりと笑うと 言いました。
「そうですよ、どうしたのですか と お聞きしたのは わたしです。きれいで かわいいひめ様が、こんなところで おいおい泣いておいでなのは 一体どうしてなのか、なにか お役に立てれば と おもって お声をかけさせていただきました。」

 「ああ そうだったの。」(それにしても なんて 気持ちの悪い ぬるぬるしたかえるなのかしら・・。おまけに なんて べっチャリして おおきいの!?)

 「じつはね わたしの大事なきんのまりが、泉の中に 落っこちてしまったからなのよ。」
 「ああ それは お気の毒に。さぞ かなしくておいででしょう。でも 大丈夫ですよ。わたしが取ってきて差し上げましょう。」
「え? ほんと? まぁ 本当なら とても うれしいわ。」
「もちろん 本当にとってきますとも。でも 私が姫さまのまりを取ってきたら、ご褒美をくださると 約束して欲しいのです。」

 (ああ そうなのね、ご褒美が欲しいので まりをとってくれるというわけね。いいわ それくらいなら。宝物のまりが 戻ってくるんだもの。)

 「そうよね、いいわ。約束してよ。なにがいいのかしら。私の持っているものなら 何でも上げるわ。真珠のネックレスでも、東の国のうすい絹のハンカチでも、沢山の宝石でも なんでも あげてよ。」
 「いえいえ、姫さま、わたしはそんなものがほしくはないのです。私の望みは あなたのお友達になることです。」

 (なんですって!何を言っているのかしら このかえるは?こんなにみにくくて 気持ちの悪いかえるのくせして、人間の それも このわたしの友達になりたいなんて!
  でも・・ しかたないわね、まりのためだもの。そのふりをすればいいわ。)

 「わかったわ。そうしましょう。さぁ はやく まりを取ってきてちょうだい。」

 かえるは うれしそうに気味の悪い笑顔を残すと ずぶりと水の中に沈んでいきました。そうして ほんのしばらくの後、いきなり姫さまの間近に 顔を突き出したかと思うと、まりを ぽんと放って 姫様に渡しました。
 姫さまは それを受け取ると さっと立ち上がって 一目散に 駆け出しました。
  かえるは びっくりして大きな声で 「まってください。」といいました。
「約束です。わたしもいっしょにつれてってくれると おっしゃったでしょう?!」
 けれども そのときには 姫さまは そんな声すら届かないお城の中に 入ってしまわれていました。

 そして あくる日のこと。
王様が うつくしい姫さまがたと 一緒においしいお食事ををなさっておいでのとき。
おそばのものが 困ったような顔をして 王様に申し上げました。

 「あのう。。 表に 大きなかえるがおりまして・・。」
「それが どうした?」「はい、それが すえ姫さまとのお約束なので やってきたと。」

 王様は これをきいて 顔をこわばらせたすえ姫さまのほうを ご覧になられて、
「姫や、いったいどういうことなのかね?」と お尋ねになりました。

 すえ姫さまは きのうのことを 王様にお話しもうしあげましたが、それを聞いた王様は 少し 厳しいお顔をなさって こう おっしゃいました。
 「それはおまえがよくない。いちど約束したことは、きっとそのとおりしなければならないよ。さあ、はやく行って、あけてやりなさい。」

 おひめさまはしぶしぶ立って、戸をあけました。とたんに、かえるはびちゃりと はいってくるなり すえ姫さまに言いました。
 「さぁ、お約束です。わたしと姫さまは ともだちなのですから、わたしをテーブルの上に上げて、あなたの金のお皿から あなたと同じ食事をし、同じ金のコップで 飲み物を飲ませてください。」

 いったいどうしたものかと もじもじしているすえ姫さまに、王様はまた、かえるのいうとおりにしなさい とおっしゃいましたので、姫さまが しかたなく そのようにしてやりますと、かえるは ぴちゃぴちゃと音を立てて 舌なめずりを繰り返しながら、さもおいしそうに 食事を平らげてしまいました。

 そうして おおきくなって さらに醜くなったおなかを突き出して、いいました。
「ああ、おいしかった。おなかがいっぱいになったら、ねむくなった。すえ姫さま、さあ、いっしょに あなたのお部屋に行きましょう。そして かわいらしい、あなたのきぬのお床のなかで、いっしょに なかよくねむりましょう。お友達なんだから。」

 すえ姫さまは、あまりのことに、しくしく泣きだしてしまいました。だって、ほんとに、ぬるぬる、ぴちゃぴちゃさわるのも気味のわるいかえるなんですもの。それが 自分のお気に入りの床のなかで、いっしょに ねむりたいなんて!

 すると 王さまは また おっしゃいました。
「姫や、なにを 泣く? 自分がこまっているとき、たすけてくれたものに、あとで知らん顔するなんていうのは、いけないことではないか。」

 王様に そういわれてしまえば しかたありません、すえ姫さまは 吐き気がこみ上げてくるのを押さえながら、さもきみわるそうに、かえるをつまみあげると、自分のへやまでもって行き、ぽいっと 部屋の隅にかえるをおきました。 そして、あまりかなしいので 泣いて寝てしまおうと、お床の中に 入ってしまいました。

 すると かえるは、やはり ずる〜りべちゃりとはいだしてきて、いいました。
  「姫さま、姫さま、約束です。さあ、そこへ上げてください。そして お休みのキスをしてください。でないと、父上様にいいつけますよ。」

( なんですって〜!!私に おまえにキスをしろですってっ!?)

 すえ姫さまは 我慢の限界!!
いきなり むくっと起き上がり、物も言わずに かえるをつかむと、思いっきり お部屋の壁に たたきつけました。

 「さあ、これで ずっとたくさんねむれることよ!いいでしょ!」

 ところが、ところが・・ いったい どうしたことでしょう?
姫さまに 思いっきり 壁にたたきつけられて、床の上に転がったかえるは、どういうわけだか いままで みたこともないような、立派でやさしい目をした王子様に なってしまっていました。

 驚いて 息も止まるかと思っている すえ姫さまに、王子様は これまでのこと―あるわるい魔法つかいにのろわれて、みにくいかえるの姿にかえらてしまった。それを泉のなかからたすけだして、もとの人間に戻してくれるのは、この国の王さまのすえ姫さまのほかになかったのだということを 話しました。

 そして また、明日にはもうさっそく ふたりで、自分の国にかえって行きたいので、どうぞ お嫁さんになってください と 言いました。
 この王子様、すえ姫さまの父上様のおぼえめでたく、姫さまのお友だちにして、おむこさまになられることになりました。       

 気持ちよく 綺麗に晴れた あくる朝、すえ姫さまとかえるだった王子様は、八頭だての白馬のひく きらきら輝く馬車に乗って、王子様のお国に旅立たれ、末永く お幸せに暮らされたということです。


 このお話は ご存知でしょうか?

 殆どの方が いちどは耳になさったことがおありかと思います。
しかし・・ わたしなど この情景をかんがえると どうにも・・・ 我慢なりませんねー。

 多分 私は 壁に投げつけるどころか、いさめられても やだー と かたくなに かえるの訪問を拒むことでしょうし、もし 中に入れたとしても 部屋のスミにはおかずに、窓から 放り投げると思います。

 青がえるとか 見た目、きれいだったり、ちいさいものなどは 平気なんですね。
でも ちょっと大きくて きもちわるい と 一瞬でも思ってしまうと どうにも 拒絶以外考えられません。
 と かえるのことは いいとして・・。

 しかし・・・、このひめ様もひめ様だけど・・ 王子様という人も 良く分からんです。

 いかに 魔法を解くためとはいえ、あからさまに自分を嫌い、嫌悪感 丸出しの上に 最後には 自分を壁にたたきつけるような女と どういう理由で 一緒になりたいのか・・??? これも ただ 彼女が「きれい」だからなのか??
 だとしたら この王子様(男って) ちょっと かたよった傾向のもちぬしだったりしないのだろうか・・??? なんて そんなことも思ったりしてしまいます。

 逆に・・、さっきまでかえるだった男と 夫婦になろうなんて、これも わからない。

 物語は もう少し先まであって、これも また わけがわからないのですが、忠義な臣下のハインリヒという、自分の大切な主人が かえるになってしまったことを 嘆きに嘆いて 胸が張り裂けるのを 押さえるために、胸に箍(たが)をつけて、主人が人間になるのを 待っていたという・・・ これも なんとも 私などは ええええ〜〜〜??? こいつ へんだぞー と おもうような そんな男が、おむかえの白馬の馬車についてきていて、主人が もとに戻ったうれしさに、また 胸がはじけそうなのを押さえているので 胸の箍が ぎしぎしと音を立てる、という・・・

 なんなの〜 いったい??? と おもうような おち?が付いています。

 末永く 幸せに暮らしたんだから ま いいか ですが。。 
 幸せって ひとそれぞれ、いろんなかたちがありますものね。 
しかし、彼らの そのごが どんなものなのか しりたいような しりたくないような・・ 

 あなたは いかがですか?  

 

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