9月のお話 月のウサギ
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むかし インドの山の中を ひとりの行者様が旅をして歩いていました。
行者様は だいぶ年を取っているようでしたが、長い間の修練で これほどの山道くらいは とくに困ることもなく 歩いていたのですが・・、ここ何日かは いつもよりも さらに険しい山道に、ゆっくりと体を横たえる場所もなく、ほんの少しの休息を取っては また 歩き始める・・ということの繰り返しをしていました。 そのためでしょう、その夜、とうとうその行者様は、人など決して通らないような奥深い森の中で 疲れ果てて倒れこんでしまいました。 どのくらいそうしていたのでしょう。 見ると 一匹のウサギが 一生懸命 行者様の持っていた火打石をつかって 火をおこそうとしているところでした。 このウサギは道に倒れてすこしも動かない人間を見つけたので、友達のサルとキツネを呼んできて、どうしたらいいか 話し合ったのです。 そんな話の後、キツネは川へ、サルは木の実を取りに森に出かけいきました。 後に残ったウサギは、あちこちから木切れを集め、行者様の近くに積んで 行者様の持っていた火打石を一生懸命打ち合わせて 何とか火をおこそうとしていたのですが、火は ウサギにとっては 怖いもの。 「どれ、私がやろう。」 「この、薪は・・ おまえがつんでくれたのかね?」 行者様は カチカチと火打石を打ち合わせて、上手に薪に火をつけていました。 「行者様、これをどうぞ。」 行者様は 自分の前に差し出された いろいろなおいしそうな木の実や魚をみて、とてもびっくりしていいました。 そして 木の実を薪の隙間にいれ、魚を焼こうとしました。 そのとき、行者様の前に さっきのウサギがやってきて いいました。 ウサギの目には 透き通った涙が浮かんでいました。 「行者様、でも 私も差し上げられるものがあります。どうぞ お受け取りください。」 キツネもサルも あっという間もありませんでした。それほど 突然のことだったのです。赤い炎に包まれたウサギを助けたくても もうそれはサルにもキツネにもできませんでした。 すると そのとき 一緒にそれを見ていた行者様が火の中に手を突っ込んで、炎の中から 焼けたウサギを運び出しました。 「ウサギよ、お前の思いは確かに受け取った。私は お前にその礼をしよう。」 そういいながら 行者様の体は どんどん大きくなっていき、その頭や顔は もう すっかり雲の上に出てしまうほどになりました。 行者様は 手を高く上げて 輝く丸いものの上にウサギをのせて いいました。 「お前はとても尊い行いをした。だから 私は お前を 永遠に輝く月に住まうことを その報いとして与えよう。」 こうして、月には ウサギがいるようになったということです。 このお話は ご存知の方 多いことと思います。 9月ですしね、お月見もあることだし・・ と考えていたら こういう話があったことを思い出しまして、ただ この際だからと あちこち 調べてみたら 結構 これが 決まった話ではないのだ ということがわかりまして・・。 つまり もともとというのが かなりあいまいなお話のようなのですね。 登場するのも ウサギは決まって出てはきますが、ほかにも リスだったりタヌキだったりの場合もあるようでした。 まぁ、元の話がどうの と 追求するものでもありませんし、大事なことだけ、つまり ただ 最後の行者様だかが 突然大きくなって 山を握りつぶして丸めたものが突きになって・・というところは、今回 あれこれ探してみて 初めて知り、とても 面白い発想だと思ったものですから、今月のお話は それも入れてみました。 説教話も因縁話もするつもりはありません。 単純に なるほどね・・と 思ったものです。 あなたは いかがですか?
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