『エレの引き出し』
おしまい
テーブルの上には ママのやいた ちょっとかためのパンと あまいおちゃがありました。
おにいちゃんとエレは ほんとに ひさしぶりに ママのおやつをがべたようなきがして、むちゅうで たべました。
エレは さっきまでとはちがって まだなんにもしゃべれません。
「かがみのみずうみのいえでたべたおかしは おいしかったねー。」
えれがこころのなかでおもうと おにいちゃんは エレをみて ちいさいこえでいいました。
「あれは うまかったな。おちゃもね。」
にしびのさすにわで、おにいちゃんは ポケットにつっこんだ手をだして そっと すりあわせてみました。
すこぅし 手があつくなって、ほんのちょっとのあいだ りょうてのあいだに ちいさな光のたまが見えました。
「やった!だいじょうぶだ!ゆめじゃない。」
おにいちゃんは すごくうれしくなって エレのへやにいきました。
はしらについているはとどけいの中のはとと、えれのふとんの上にころがっているきいろいひつじにむかって おにいちゃんは そっと いいました。
「ね!またいこうね。また つれてってよね。ゆりの人にもあいたいし、トムじいや光のひとたちにも、マントの人にも また あいたいよ。
そして あの まだ いっていない ねむらせのいえに、こんどは ちゃんと つれてってよね。」
おにいちゃんは それだけいうと かいだんをおりようと へやをでかかりましたが、ふと ひつじやはとが そこにじぶんとおなじおおきさでいるのではないかと ふりかえりました。
もちろん そんなことはありませんでした。
「ありがとう、ほんとは エレだけつれていくはずだったのに、ぼくもつれてってくれて。
ぼくには トムじいからの 光のたまが ちゃんとあるよ。きみたちといっしょにぼうけんできて、すごく うれしかったよ。
また いこうね。あんまり ぼくがおもくならないうちに・・。」
そのとき、とけいが4時をしらせました。
はとどけいからは グレーの木のはとが ぽっぽーと 4かい とびだしてきて なきました。
さいごに とけいの中にもどるとき、はとは おにいちゃんにむかって ばさっとつばさをはばたきました。
おにいちゃんは はとがおにいちゃんのいったことを わかった といっているとおもいました。
へやをでるとき、おにいちゃんは きいろいひつじのこえをききました。
「また みんなでいっしょにいこうぜ。だから エレとなかよくするんだよ。」
うすぐらくなった かいだんのとちゅうで、てをすりあわせたおにいちゃんの目のまえに、ぽう〜っと やさしくてあるい光が うかびました。
おわり
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