3 焚き火・お芋・子供たち
今年は 椿が遅いような気がします。 其方では いかがですか?
この建物の回りの椿たちは、この間 ほんのちょっと 暖かい日が続いたことがあったあたりから、今現在 先のほうに すこし花の色が見えてきたつぼみが、ようやく ちらほらしてきているところです。
この時季、椿って ほんの数輪・・というところでしたっけ??
なんだか すごく 遅いような気がして仕方がないんですけど ね・・。
さっきまで 今日は 朝から穏やかないい日だな なんて 思っていたのに、お昼ご飯を終えたころから、なんだか いきなり 冷たい強い風が吹き始めています。
こうなると つい お芋を焼きたくなりましてね。今 オーブンの中に サツマイモを放り込んだところです。
水で洗ったままのサツマイモを オーブンシートを敷いた天板の上に乗せて、150〜160度で 約1時間ほど 焼くのですが、初めの数分は 早く焼けないかな なんて思っているのに、何かしていると すぐ忘れてしまって、焼きあがるころの良いにおいで あ そうだった、お芋やいてるんだったっけ なんていうくらい、のんびりしたやり方ではあります。
でも 本当は できたら 焚き火で焼きたいんですよね。
芦名にある実家に、以前 北からの風をよけるように 小さな雑木林があったころは、秋から冬にかけての落ち葉が とにかくいっぱいで・・、近いところに他の家がなかったこともあって、よく 落ち葉を集めて 焚き火をしたことがありました。
焚き火にも ちょっとしたコツがあって、表の水道の蛇口になるべく近いところで バケツに水を張っておくのですが、まず そのあたりの土をほって すこし くぼませます。
その間、子供たちに 石を集めてもらい、それを うまい具合に くぼみに重ねて、石焼に出来るようにします。
それから、それぞれが食べたいと思う 洗ったサツマイモやジャガイモ、たまに皮をむいたゆで卵やなぜかきっと残り物だったんだろうと思いますが、鮭の切り身・・なんてものをアルミフォイルに包んで石の上に並べ、もう少し乾いた落ち葉を乗せたら、まず 火をつけて燃やし始めます。
ある程度 燃えてきたな と おもったら、また 子供たちをその辺にやって、さらに落ち葉をかき集めてさせ、どんどん 乗せて行きます。多少の湿り気でも 火に勢いがあれば、かえって いぶったような風になって 風味?が出てくることもあります。
(まぁ・・人によっては 煙くさい とも いいますが。。)
そこまでしたら、もう あとは 焼けるのを待つだけなので、その間、やっぱり みんな 焚き火をしている とか お芋を焼いているなんてことを 忘れてしまうくらい、勝手に遊びまわっていて、親は ひとりぽつんと火の番をする・・のでした。
焚き火の良いところは、じっくり時間をかけて ゆっくり食べたいものを焼いていくので(だから お芋が とても甘くなるんです!)、芯まで良く火が通って、寒い中でほくほくの熱々を はふはふいいながら、みんなで食べるところにあるのですが、そこへいくまでには 結構 北風に吹かれて寒い思いをしたり、少し風があると 煙が自分のほうへきて 目にしみたり、落ち葉が不足してきたりして、焦って その辺のものを かき集めてきたり・・と ひとりで なんとなく忙しくするので、ちょっとしたシンデレラ気分・・なんかを 味わったりしていました。
そして、ようやく お芋が焼けると、子供たちを呼びます。
この寒い中 なにをやってたんだね、君たちは!といいたくなるほど、顔を真っ赤にしながら、走り回ったりあちこちにもぐりこんだりしていた子供たちは、木の葉や木屑、草のとげとげなどを着ている物にやたらにくっつけたり、なぜか靴下と靴が同じ土色になったりして、ばらばらと集まってきます。
大分 量の減った落ち葉を少しずつのけて、夫々がおいたおやつを探し当てます。さつまいもはそのままでも、ジャガイモには 台所からバターを持ってきてつけたり、卵に塩をかけたり、だれだったか みかんを焼いたりもして、皆、焚き火を囲んで 一生懸命、黙って食べました。
昼食が終わってから始める焚き火ですが、そのころには 早い日暮れが近づいて、風も冷たさを増してくるので、焼いたものを持って 家の中で食べてるほうが良いと思うのですが、どうしてか もう 勢いも少なくなってきている焚き火のそばで、皆で 食べていました。
みんなが満足して、おいしかったねー 言い合ったあとは、残り火に回りに散った落ち葉を集め入れて全部灰にしたあと、バケツの水を十分にかけて、すっかり火を消します。
次の日、焚き火をした後に出来た灰をすくって集めたら、庭の一角に持って行ってまとめておきます。それは 土に帰ったり、風に飛ばされたり、雨で量が減ったりしますが、時に 花や野菜を植えるときの混ぜ物として、使ったりもしました。
焚き火のあとの石ころとくぼみは、ちゃんと 元に戻すのです。
ただ 石は焼けて黒々としていたり、たまに変った模様になったりしたものもあったりして、そういうものは ちょっとした宝物として だれかさんのぽっけに入ったり、ちいさな小箱にしまわれたりしました。
くぼみには 土を入れて 平らに均して、誰が通っても危なくないようにしますが、それも すぐに 木々の落ち葉が 覆ってしまいました。
今は 安易に焚き火をすることが禁じられていますし、実家の よく焚き火をした北側の裏庭も 市に土地を買われてしまったために 木々がすっかり伐採され、しばらく前から 味気ない 薄ら緑のフェンスになってしまい・・ だから 落ち葉もなくなって 掃除には 手がかからなくはなったけれど、もう 全然 焚き火を思いつくこともないほど たしかに つまらない冬になってしまいました。
それに 今は 煙を迷惑と感じる向きが多く、やはり 思いつきで焚き火をするというのも 難しくなっていますよね。 だからよけいに 時々、焚き火日和な日になると、あのころのことを思い出しては、今は たぶん そんなことしても 誰一人 寄って来もしないであろう 可愛かった子供たちの笑顔と お芋を包んでいた 丸々とした手たちを 懐かしく思うのです。