柴田トヨさんさん の 詩の頁

詩集くじけないでより

 

ことば

 

何気なく

言った ことばが

人を どれほど

傷つけていたか

後になって

気がつくことがある

 

そんな時

私はいそいで

その人の

心のなかを尋ね

ごめんなさい

と 言いながら

消しゴムと

エンピツで

ことばを修正してゆく

 

 

神様

 

お国のために と

死にいそいだ

若者たちがいた

 

いじめを苦にして

自殺していく

子供たちがいる

 

神様

生きる勇気を

どうして

あたえてあげなかったの

 

戦争の仕掛け人

いじめる人たちを

貴方の力で

跪かせて

 

 

風と陽差しと私

 

風が

ガラス戸を叩くので

中に入れてあげた

そしたら

陽射しまで入って来て

三人で おしゃべり

 

おばあちゃん

独りで寂しくないかい?

風と陽射しが聞くから

人間 所詮は独りよ

私は答えた

 

がんばらずに

気楽にいくのがいいのね

 

みんなで笑いあった

昼下がり

 

 

二時間あれば

 

世間には

まだ解決されていない

たくさんの事件がある

 

コロンボ警部

古畑任三郎警部

二人が協力してくれたら

犯人をきっと

つかまえてくれる筈

 

二時間あれば

 

 

忘れる

 

歳をとるたびに

いろいろなものを

忘れてゆくような

気がする

 

人の名前

幾つもの文字

思い出の数々

 

それを さびしいと

思わなくなったのは

どうしてだろう

 

忘れてゆくことの幸福

忘れてゆくことへの

あきらめ

 

ひぐらしの声が

聞こえる

 

 

くじけないで

 

ねえ 不幸だなんて

溜息をつかないで

 

陽射しやそよ風は

えこひいきしない

 

夢は

平等に見られるのよ

 

私 辛いことが

あったけれど

生きていてよかった

 

あなたもくじけずに

 

 

化粧

 

倅が小学生の時

お前の母ちゃん

綺麗だなって

友達に言われたと

うれしそうに

言ったことがあった

それから丹念に

九十七の今も

おつくりをしている

 

誰かに ほめられたくて

 

 

 

先生に

 

私を

おばあちゃん と

呼ばないで

「今日は何曜日?」

「9+9は幾つ?」

そんな バカな質問も

しないでほしい

 

「柴田さん

西条八十の詩は

好きですか?

小泉内閣を

どう思います?」

こんな質問なら

うれしいわ

 

 

私 T

 

九十を過ぎてから

詩を書くようになって

毎日が

生きがいなんです

身体は やせ細って

いるけれど

目は 人の心を

見抜けるし

耳は 風の囁きが

よく聞こえる

口はね

とっても達者なの

「しっかり

        していますね」

皆さん

ほめて下さいます

それが うれしくて

またがんばれるの私

 

 

目を閉じて

 

目を閉じると

お下げ髪の私が

元気に

かけまわっている

 

私を呼ぶ 母の声

空を流れる 白い雲

どこまでも広い

菜の花畑

 

九十二歳の今

目を閉じて見る

ひと時の世界が

とても 楽しい

 

 

く じ け な い で  index

 

 

金羊雑感

 

トヨさんに限らず

私たちは 始終 ことばのやりとりでは

苦労が絶えないように 思う

 

そんなつもりで言ったわけではなかったのに

知らないうちに 相手を傷つけ

悲しませ、不快な思いにしていたことを

ずいぶん 後になっても 知ることもあり・・

 

なんとも 哀しいやら 情けないやら

後悔しきり、もどかしいばかりになる

 

近い過去だったり、会おうと思えば合える人ならともかく

そう簡単には あったり言葉を交わすことのできないときなどは

自分の言ったことのひどさに

ただただ 一人赤面しつつ、唇をかむばかり・・

 

心に 相手を思い浮かべては

ほんとに 悪かった、すみません と つぶやいてみたりする

 

なかなかに、わびしいことではある・・

戦争の仕掛け人 と いじめる人 は

たぶん  おなじ

 

生きる勇気や力は どんな人の中にも在る

幼いから 弱いから 物分りが悪いから・・

劣っている と された人たちを

自分が勝っていると 思っている 愚かな者たちが

ねじ伏せ 組み敷き 足蹴にし・・

 

トヨさんは

戦争で亡くなった若者たちと

いじめで自ら命を絶った者たちを

同じ目線でみる

 

戦争なんて 和やかに暮らしている

普通の人達にしてみれば 本当に 大迷惑

いじめなんて ただ 穏やかに暮らしたいと思っている

普通の子供達にしてみれば 本当に とんでもない災い

 

生きたくても 生きることを選べなかった かつての若者たち

いじめられる子供達も そうなのかもしれない・・

 

それが わかっているのに

助けられない 力の無い自分が もどかしくて 悔しくて

神様

どうか 一時でも早く 助けてください! と

祈るのです

 

ある一人暮らしの人からのメールに

これからのことを思うと これでよかったんだろうかと

自分のこれまでを 考えてしまう と あった

 

どんな風であっても、

結局は 人は一人ですから、

そして その時は その人にとって

一番良い時に来るのですから、

心配しないで お暮らし下さい と 返事した

 

なぜだか 涙が出て・・ という 返事の返事を読んで

そうですよ、私だって 一人なんです

これまでも そして これからも・・

私には 子供や連れ合いがいるから

一人じゃないと思われることもあるけれど

どんなことをしても 「私」を すっかり知ることは無い

 

それは、群れの中の孤独

これほど 寂しいことは無いのですよ

 

だからね、私は

自分をすっかり知っている掌に

まるまる 自分を あずけて 安心するのです

 

。。と 心の中で つぶやいていた

トヨさんを いいな と おもったのは

この詩を 読んだ時だった

かわいい、ユーモアのある人なんだなぁ・・ と

 

そして

とっても 素直なんだろうな とも おもった

そうね・・

コロンボも古畑任三郎も 好きだけど

コジャックも いいよ って

ちょっと 言ってみたくなる

 

本当にね

解決されなくてはならない 解決したい事件が

あまりに おおいんだもの

はやく 二人で解決して欲しいね トヨさん!

 

先日は 母の誕生日だった

母は そういう日だ ということも

いくつになったのかも 忘れていたが・・

 

87になった母は かなり 記憶があいまい

忘れていくことを さびしいと思っているのかどうか

そのあたりは わからない

 

ただ・・

取り繕うかのように

会話に入るためにだろうか・・

わかっている風な 返事をするのを聞くのが

自分は 嫌で仕方が無い

 

しょうのないことなんだろうと おもうけれど・・

どこかで そんなになった母 というのを

納得していない自分がいるんだな と おもう

 

衰え方は 人様々

そう 人に言っている自分のくせに・・

しょうがないな  と おもう

 

辛いことは いつと限らず 

気がつくと それにとらわれている時がある

それと同時に 突然の災害などにあって 辛いこともある

いつも 思うのだ・・

まったく 我々の生活なんて 辛いことの方が多いんだから・・ と

 

でも だからこそ

空を仰いで その青いまばゆさに目を細め

日のぬくもりに ひとり微笑み

ちいさな花々に そっと語り掛けつつ

辛さのまわりを囲んでいる それら諸々を思い

手近に感じることが 本当に 大切なことだ・・ と

 

ある時期を 思い出せないほどに 過ごしたこともあったけれど

それでも 今があるのは 生きてきたから・・

生かしていただいたから・・

何の故にかは わからないけれど

今 自分が生きていることが

自分の人生の ひとつの答えなんだろうな・・と

思うことが 時に あるのだ

 

”化粧って 鉢巻しめるようなもの”

という 川柳があった

そうだな・・ と 女ならうなずくんじゃないかな

 

子供は 母親が綺麗にしているのが 好きだ

自分の親を 友達が褒めるのを聞くのが 好きだ

子供の友達から あこがれられるような母親が嬉しいものだ

 

化粧するって 化け装うことだけど

それは 子供に誇らしさをもたらす為の妖かしであり

お母さんが好き、そういうお母さんの子で うれしいという

そんな 思いに気づく為の 魔法だとおもう

 

褒められると 人は 綺麗になるんです

見られることは ビタミンになるって あったでしょ、

それは ほんとに いくつになっても いつも同じです。

 

 

人には 年をとるということへの嫌悪があるのかもしれない

年をとった人を 小ばかにするようなところもあるし

どうも 舐めきった物言いや

一見、やさしそう、実は 子ども扱い・・みたいな

そんな あしらいをしているのを なんども見ている

 

年をとって 物を忘れて 言葉が出にくくなって

憶えているはずのことの説明が出来なくなって・・

そんなことを マイナスとみなす風潮がある

 

トヨさんは ちゃんと そういうのを見分けている

知っている

だから言うのだ

そんな バカな質問も しないでほしい・・ と

 

そんな馬鹿な質問をされるのは 悲しいだろう

不愉快に決まっているだろう

でも わかんなそうだな と おもうと

お年寄りだと思うと

きづくと そんなことを やっちまってる自分もいる・・

 

 

90を過ぎてから 詩をかくようになったという トヨさん

毎日が 生きがいだって・・

これは すごいこと

たいしたこと

 

こんな自分だって これだけの時を生きてくると

時に 人のあれこれが 見えてくることがある

 

嘘をついている 本心じゃないな

本当は こういいたいんだろう 

あれは あの人のやさしさ・・ などなど

人の 心の機微が 解り易くなってきていると思う

 

トヨさんくらい生きたら

きっともっと いろいろなものが見えてきて・・

そして すぐに あれこれいえないことなどが

案外 さいわいするのかもしれない・・ なんて

ちょっと そんなことをおもった

この 詩 です

 

 

実家の母は、膝に力が入らないから といって

ほとんど 一日中 椅子に坐ってすごす

 

たまには 歩かないと ほんとに 動かなくなるよ

と 言えば、ほんとにそうね そうおもうわ というけれど

決して その辺すら 歩こうとはしない

 

一日中 同じ椅子に腰掛けて

庭を見、家と家の隙間から見える空を見、

猫の動向を見守り 出入りする家族を見ている

 

忙しくて そこにいる母のことを 忘れていて

ふと 気づいて 見やると

何を見るともなしに ただ ぼんやりと 

目を泳がせているような時がある

 

トヨさんみたいに 母親とのことを 思っているのかも

と この詩を読んで 思った

 



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