from Aurea Ovis

 

今年一年の ご親切とご利用を感謝いたします。

本当にありがとうございました

Marry Christmas to You!!

 

 12月のお話  聖マルチノ


 昔 ある寒い冬の日に、マルチノという青年騎士が 急な用事のために、馬を走らせていた時、ふと 道端に ぼろの塊のようなものを見つけました。

  近寄ってみると それは 生活の厳しさが年をとらせたであろう 一人の男で、積もる雪を さらに冷たく固めるかのような霙の降る中、寒さをよけて 道の端に体を丸めて じっと縮こまっていました。
  男は 近づいてくる ひづめの音に、そろそろと目を上げて 無表情に、マルチノを 見上げました。
 
 青年騎士のマルチノは 信仰深い、優しい心を持っていたので そのまま 立ち去ることが出来ずに、なにか 与えられるものはないかと 持ち物を確かめましたが、とても 急いで飛び出してきていたので とくに 何も持っていませんでした。
 
  目の前の男は 暖かそうなマントに身を包んだ りりしい青年が 馬上で霙交じりの雪にまみれて 自分を見下ろしているのを見ても、なにを思うこともできないほど、疲れ果て、そして 人生に絶望していました。
 
 ふと マルチノは思い立ち、馬を下りて すらりと剣を抜きました。

 目の前の青年騎士が 今にも 自分にきりつけてくるのかもしれないと、寒さにしびれる頭に ようやく 思い浮かべた男は、そのとき 初めて 人間らしい恐怖の表情を、その なにもかも凍りついたような顔にうかべ、おびえました。

  マルチノは 剣を抜いたまま 男に近寄ると、声をあげることも忘れて 激しく 震え慄いている男の前で マントを脱ぐと 剣を振り上げ、ばさぁっと 一気に 勢い良く それを 二つに裂いてしまいました。
 
 をさやに収め、マルチノは 身をかがめて、男の体を半分になったマントで包むと、「少しでも 暖かいように・・!ほかに何もないのだ。」と すまなそうに言い、思いがけない出来事に 驚いて声も出ない男の手に 持っていた少々の小銭を握らせると、さっと 馬にまたがり、先を急いで 立ち去りました。

             
 
 マルチノは 馬を走らせながら、心の中で ああもすればよかった、こうもできたろうに・・、と あれこれ あの男のために考えては、ああしてよかったのかどうか、なんども 思い返していました。

 出向いた先では、軍人の自分が、半分のマントなどを身に付けていると きっと なにやかにやと 人が聞いてくるだろうと思い、馬を下りると さっさとマントを丸めてしまいましたので、だれも マルチノが半分しかないマントを身にまとってきたとは 気付きませんでした。

 用事を済ませたマルチノは、馬上でマントを羽織り、ますます激しくなってきた雪の中を 急いで もと来た道を引き返し、あの男がいたところまでやってきました。

 果たして 男は 寒さの中を あの道端に マルチノからもらったマントに身を包んで、マルチノの通るのを待っていました。そして マルチノの姿を見つけると走りより、男の姿を認めて 驚いているマルチノに いいました。

  「あなたのご親切のおかげで、ご覧ください、私は 暖かい食べ物と飲み物で 生き返り、さらに暖かなあのマントを もう一度裂いて、もっと 寒さに震えている私の友人にも 分け与えることが出来ました。本当に ありがとうございました。
  神様は あなたに よりたくさんの祝福をおかれることでしょう・・・!」
 
            

 その晩、マルチノは 夢を見ました。

  夢の中では あの男が マルチノの与えたマントを羽織って、じっと こちらを見つめていました。
 その姿は あのマントの中で 急に光を帯びて輝きだし、そして 静かに マルチノに 近づいてきました。マルチノには それが キリストであることが すぐに分かりましたが、身動き一つできずにいました。キリストは マルチノの肩に手をかけて、優しく微笑まれました。
 

 優秀な軍人でもあったマルチノ(マルティヌス)は 後に 貴族にして 生涯裕福にくらせるその立場を離れ、貧しい農村を中心にした 希望と喜びのキリストの教えを説いて回る修道者として、その一生を キリストにささげたということです.。

 

 


 このおはなしは ご存知でしたか?
 
 ヨーロッパの古い言い伝えで、後に聖人となった 聖マルティヌスという人のお話です。 
 しかし、上のお話は 細かい部分の描写を 遠藤が ものすごく ”きっと こんなふうだったろう・・”という思いで 脚色しています。ですから これをこのまま そういうお話だと思ってしまわないで下さい。

  とっても 古いお話で それも いいつたえですから まったくの確かなことというのは おそらく 分かっていないのだろうと思いまして、クリスマスも近いし、なにか ここを開けてくださった方に プレゼントが出来るといいな・・、と 思っていたところ、急に マルチノさんの お話を思いついたので、面白くも何ともない 単なるいい話で終わらせても・・と、ここは ほんのちょっと ドラマチックに仕立ててみようと 思った次第です。 

 子供達の通っていた カトリック系の幼稚園で クリスマスプレゼントに頂いた 絵カルタのようなものだったと思いますが、その中に このおはなしの聖人を描く時に 必ず用いられるモチーフがありまして、それを 結構 子供達が 何かのときにいつも 話題にしていたのを思い出したので お話しようと思ったのです。


  じつは クリスマスのお話ではありません。ヨーロッパのガリア地方の、おそらく 4世紀くらいごろの出来事のようです。
 
 冬の準備を始める日としての 11月11日が お祝い日だとの事ですが、当時の ヨーロッパ、ガリア地方は 大分 気温も低く、寒かったようなことを 読んだことがあります。

  ちょっと 時代は違いますが、辻邦夫氏の「背教者ユリアヌス」にも そうあったと思いますが・・、まちがったら ご免なさい。ユリアヌス帝も 3世紀半ばくらいの人でしたよね。


 聖書の中のどこかに、困っている人に 「暖まっていきなさい。」と言うだけなら 誰にでも出来るが、実際に 暖かくしてやらなければ 行為は成り立たない、というようなことが 書いてあッ他と思うのですが・・(言い方は 完全に違っていると思います。)現実問題として 今 そこに困っている人がいる時、自分の持てるもので 一体何ができるか・・、これを 考え、出来ることを実行する、それが 私たちには きっと 必要なんだろうと 私は このおはなしで 思いました。

 あなたは どう思いますか?

 


みんなが しあわせで あるように!!   

2002年も 今まで以上に Aurea Ovisが よりいっそう
あなたの お役に立てますよう・・ 願っております。
よいお年を・・!

 

 

2001.12. Aurea Ovis 遠藤由美子

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