3月のおはなし   お姫様とえんどう豆



  高い山々に囲まれた緑濃い美しいある国に、とても大きくて 立派なお城がありました。
 
 その国の王子様のお父上の王様は 大変 よく国を治め お母上のお后様とともに 国の民達にも とても慕われていましたので、一人息子の王子様のご結婚には たいそう 気を配られ、いろいろな国の いろいろな階級のお嬢様方を 熱心に お調べになられては 次にこの国を治める王子様にふさわしい 本物のお姫様を 王子のお后さまに迎えるために と ずいぶんお心を尽くされておられました。

 ところが あるとき突然 お二人は 風邪をこじらせて つぎつぎと なくなられてしまわれてしまいました。

 お二人とも 最期まで 王子様のご結婚のお相手のことを 大変心配されていて、王子様の周りの御付きの人たちに くれぐれも 国のためにも 王子様ご自身のためにも 「本物のお姫様」をお后様にするように・・と 言い残されました。

 さて ある肌寒いような 春の嵐の晩、王子様は そろそろお休みになろうとしておいででした。

 そのとき 激しい雨風に混じって お城の大きなご門の扉を 必至でたたく音がきこえてきました。

 門番の報告によりますと ずぶぬれの若い娘が たった一人で 道に迷ったので お城に泊めていただけないだろうか・・、と お願いにあがっていると 伝えてきましたので、こんな夜に かわいそうなことだ と 王子様は ひとまず その娘を 城にいれて世話をさせ、さっぱりさせてから 娘を呼び、いったい どうして こんな晩にたった一人で 道に迷うようなことになったのか、訳を お尋ねになりました。

 すると 娘は 「私は 東の国の末の姫でございます。今朝 あまりの天気のよさに 皆と山歩きに出かけたのですが、いつのまにか 皆とはぐれ、どうかして 城に戻ろうとしましたが あいにく このような雨に降られて 右も左も分からなくなり 疲れて 途方に暮れておりました。しかし それでも 嵐の中を歩くうち、こちらのお城に たどり着きましたものですから 思わず 伴の者も無しで 失礼かと思いましたが お助けをお願いすることを決心いたしました。」と もうしました。

 そうこうしているうちに さらに大きく お城の大扉を 激しくたたく音が 聞こえてきました。
 またも 門番がやってきて、今度は たくさんの従者を連れて 立派な馬車に乗った 美しい衣をまとった女の方が 雨宿りをお願いしておいでです、と 伝えてきました。

 「やれやれ、一体今夜は どうしたというのだ・・?」 
王子様は この妙な出来事を 不思議に思いながらも その 大勢の者達を 城に招き入れることを ゆるしました。 そして 後から来た たくさんの従者を連れた方を お呼びになり、詳しい事情を 聞かれました。

 「私は 西の国の王女です。父王の使いで 遠国へ向かった帰りに この嵐にあい、伴の者達も疲れ果て どうしたものかと思っていましたところ お城の前に 行き当たりましたので、今晩一晩の雨宿りを お願い致したしだいでございます。」

 王子様は・・二人とも 東と西の隣国の王女だという・・、一人は 伴もなしに たった一人でずぶぬれになって ドロだらけだった。
 もう一人は たくさんの伴を連れて 馬車に乗って たいそうな着物で 濡れることも無くやってきた・・、おかしなこともあるものだ と思いましたが、ふと 思いついて あることを 御付きの者達に命じて その晩は お休みになられました。

 翌朝は 風も収まり 大変 きれいに晴れた 良いお天気になりました。

 王子様は 昨日の思いつきが どんな効果をもたらしたかを知りたくて 朝食のお席に 二人の王女様を お誘いになりました。

 昨晩 ずぶぬれでやってきた王女は 王子様のお呼びにこたえてやってきた時、目を赤くして とても疲れた様子でした。

 「おはようございます。夕べは よく眠れましたか・・?」と いう 王子様の質問に その王女は
 「それが・・、大変申し上げにくいのですが、お布団の中に なにか 小さなものがあったようで それが 寝返りを打つたびに 気になって なかなか 寝付けずにおりました。」 と 答えました。

 あとからやってきた 今日もまた 美しい衣装に身を包んだ 西の国の王女様は 王子様の同じ質問に 「ええ。ありがとうございます。おかげさまで、大変よく ぐっすりと休むことが出来ました。」

 しばらくして 西の国の王女様をお迎えに来た従者達が お城に到着しました。 お姫様たちは 王子様にお礼をを申し上げて それぞれのお供の者達と一緒に それぞれの国に帰っていかれました。


 それから まもなく あのお城の王子様に お后様をお迎えになるという 喜びの日が訪れました。

 お相手は・・・、あの 嵐の夜に お城にいらしたお姫様のうちのお一人でした。

 「ふかふかの敷布団13枚の中の 下から2番目にいれた 一個のえんどう豆が 気になってねむれなかったなどどいうのは 本当の姫君でしかありえない。」という 王子様のお言葉が そのご結婚の決め手になった ということです。

 


さてさて いかがなものでしょう・・?

 このおはなしの題名は 「お姫様とえんどう豆」。どこのおはなしだったでしょうねぇ・・。ヨーロッパのどこかだったと思います。

 えんどう豆は ご存知ですよね。 えんどう豆です。 それも たった 一個。

 ふかふかの敷布団 それも 13枚重ねたうちの下から2番目に入れたそれが、どうして分かるんでしょう・・? 
 あるわけ無いけれど 私だったら 別段気になることもなく しっかり寝込んでいるでしょうねぇ・・。

 しかし どうですか? 

 そんなことが分かってしまって それで ねむれないの・・というのは 可愛いんでしょうか? 
 そして そういう「繊細さ」って 男の人(この場合は王子様)には 魅力なんでしょうか・・・。
 後が 大変だと思いますけれどねー。(ちょっと やっかみが入っているかな・・?)

 

 完璧を求める中に 繊細さ―この場合は特に、個人的には それを 神経質 と 呼びたい―が 入るなんて思いもしませんでしたよ。

  うっすら憶えている このおはなしの挿絵の その一人でやってきたお姫様の絵が やけに楚々としていて なよなよと、なんとも 頼りなく・・・、でも よく考えたら ものすごい嵐の中を たった一人で夜道を それも 山の中をやってきたんでしょう? 
  これは どちらかというと 豪胆にして勇気溢れる、そして決断力のある、またまたさらに、それを実行してやり遂げてしまえる力量をお持ちの、「たいしたお方」と お見受けしたのですが・・・、いかがなものでしょう・・?

 そう 思うにですね・・、つまり 
どうにも理解しがたいほどの繊細さ
 と 
たった一人であろうと 何とかして目の前の困難を打破せんがために 雄々しく 果敢に挑むことができ 
なおかつ 格好なんか気にしないで 
それでも わたしは 姫です、と 言い切って当然 という 
そういう相反する面を それぞれお持ちのお方というのが 
実は 「本当のお姫様」 というのだ と このおはなしは言っている ・・ の かな・・ なんて 思ったりしたのですが・・。

 どうでしょう?王子様は 見る目があったのでしょうか? それとも 大見当違いだったのでしょうか?
 それとも 結果オーライということで まずまずだったんでしょうか・・?
 
 結婚相手を選ぶ 参考になりますでしょうか・・? 

 結婚って 大きな勘違いかもしれませんものねー。

(まだ これからのかた 夢をぶち壊すようなこといって すみません。だって 本当なんだもの こと わたし(達)に関してはね・・。)

 さぁ あなたは どう 思われますか・・・?

 

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