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4月のお話し
「パンを踏んだ娘」
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あるところに 子供のない パン屋の夫婦がいました。 村では 一番の おいしいパンを焼くと 評判でしたが、夫婦は いつも 子供の無いことを とても 寂しく思っていました。 あるとき その夫婦は 村の親切な人の世話で 養女を迎えることを決心しました。 「気立ての良い 働くのが好きな女の子」というのが 夫婦の望みでした。そして やってきたのが インゲルという 親のわからない 孤児院育ちの女の子でした。 インゲルは 色が白くて 金髪の美しい 誰が見ても綺麗な子でした。インゲルは 養女になって 孤児院を出て行くことを 長い事夢見ていたのですが、自分のような綺麗な子は どこかのお金持ちの家に引き取られて、何不自由なく 幸せな毎日を過ごすべきだと 思っていましたので、養女に出されることは喜びましたが、パン屋の夫婦の下に行かされると聞いて 大変悩みました。 しかし 孤児院にいては そう なんども 養女になれるチャンスはないので、思い切って 表に出て また そこから お金持ちの家にもらわれていけばいい と 考えたのです。 こうして インゲルは パン屋の娘になりました。 一方 パン屋の夫婦は 自慢の娘が 地主さんのところで お仕込みを受けているということを 大変名誉なことと考え、失礼のないよう、娘の着るものや持ち物には とても 気を使って いろいろに 用意させました。それは それは 大変 お金のかかることでしたが 夫婦は 自分達に必要なものを我慢してでも 娘のために いろいろに整えてやったのです。 そんなある日 お上さんが 急用で、町まで行かなければならなくなり、店を離れられない主人は インゲルに 「お母さんの代わりに 地主さんのところへ パンを届けておくれ。」と 言いつけました。インゲルは 最初 とても 嫌がっていましたが、こんなところで パンの事なんかで言い合っているより 地主さんのところへ行って、お茶でもご馳走になろう と思い 綺麗におめかしして 出かけていくことにしました。 その日の前日は とても ひどい雨が降って 道は あちこち ぬかるんでいました。 しばらくして インゲルは これ以上待っても どうにもなりそうにないと思い、スカートをつまみ 綺麗な靴を気にしながら なるべく 浅めのところを 歩いていこうと 一歩を踏み出しました。ところが ぬかるみは 思ったよりも深く、インゲルの足を捕らえて 離しません。インゲルは もう一方の足が濡れる前に 急いで もっていたパンを 泥の中に投げこんで、足が濡れないよう すばやく パンの上に降ろしました。 すると 突然 インゲルの体は ずるずると ぬかるみの中に引き込まれていき、あっという間に 暗い 何もない ドロだらけの場所に おちていってしまいました。 インゲルは あれがすっかり閉じてしまったら もう 二度と ここから出られない と 思い、地主さんのところで教わって やっと 覚えたお祈りを 一生懸命大きな声で 唱えました。すると かすかな声が インゲルに言いました。 インゲルがいなくなってから 初めの冬がやってきました。 あるとき お上さんは 店の前を掃除していて あることに 気がつきました。 お上さんは 大変 不思議に思いながらも そのすずめが気になって 毎日 すずめのために パン屑を こしらえてやるようになりました。 さて 勘の良い皆さんは もう すでに お分かりでしょう。 そして 春の日差しが あの寂しいパン屋の窓を 明るく照らす ある暖かな日の朝、いつものように 店の前を掃除するお上さんのそばに あのすずめが飛んできて きょうは また どうしたことか いつまでも 纏わり着いて 離れません。 お上さんのエプロンには 昔 インゲルを胸に抱いた時 インゲルの金色の髪の毛がついていたのと同じように ひとふさの 薄茶色のすずめの胸毛が 風になびいていました。 お上さんは ただ ぼうぜんと すずめの行方を 目で追いながら、じっと たちつくすばかりでした・・。 このおはなしは ご存知でしたか? この話は 何かにつけて 思い出されるものの一つで、其れを思い出すたびに 結末の現世的救いの無さに どうにも 納得がいかず、(何で ハッピーエンドではないのだ・・?と 思うこと) 一抹の不安―ひょっとして 振り向いたとたんに ずるずると どこかに引き込まれるのではないか・・とか 角を曲がったとたんに 出くわした水溜りに 沈んでしまうんじゃないか・・とか いろいろに 心配が広がったものでしたが、実は それは 今も あんまり かわりなく そう思うことのあることを 告白します。 ちょっと見 人様からは 一応 大人というか 出来た(?)人間のように 思われている遠藤ですが、じつは 案外 ガキくさいところがありまして、そういうことを 思い出し始めると しばらく 毎日が 異次元世界のように見えてきて、いちいち おどおど びくびく、ひやひや ワクワクしながらの 日常が展開してしまうのが 結構 恐ろし楽しくて、こんども また 幾日かを そんなことを 感じながら 過ごしてしまうのだと思います。 ま そんな風に 余裕で言ってしまえるところが もうすでに 子供の世界とは とおくなってしまっているという(この年で 何をいっているかとも思いますが) 確かな 現実を感じざるを得ません。 そうですよね 伝える側になってしまっているんですものね。 どうですか? 少しは 楽しんでくださいましたか?
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