4月のお話 ナイチンゲール紅いバラ

 若くて貧しい世間知らずな学生が、みんなにとても人気のある 綺麗で可愛いけれども それを鼻にかけているような高慢な少女に恋をしました。
 彼は どうにかして彼女の気をひきたいと思っていて、ダンスパーティーで 彼女を連れて行って、一緒に踊れたら・・ 本当にすごく幸せなのに、と 心から思っていました。

 あるとき、彼は うまく彼女と話をする機会が出来たので、必死になって 思いのたけを 真っ赤になりながら 勇気を奮って 一生懸命 打ち明けました。
それを おもしろおかしそうに見ていたその少女は、「それじゃあ・・、紅いバラを一本 私のために持ってきてくれたら、踊ってあげてもいいわよ。」というではありませんか。

 彼は その言葉を聞き、彼女のその微笑が自分に向けられているのを見て、もう 有頂天! 必ず 真っ赤な美しいバラを持ってくるから といって、急いで家に戻りました。
 彼の家の庭には、バラの花が沢山咲いていたからです。

 若くて貧しい世間知らずな学生は、家に戻ると中へも入らず、庭に行き、沢山咲いているかぐわしいバラたちの中から、できるだけ真っ赤で綺麗なバラを探そうと、一生懸命になっていました。が・・、あろうことか その庭には、紅いバラが一本もなかったのです。
 町の花屋で売っている真っ赤なバラなど、たいそうな高価で、とても彼には 買えないものだったので、彼は 心底がっかりし、悲しみに暮れて なにもかもお終いなような気分にまでなってしまいました。

 ところで。。彼の家の沢山のバラを気に入っていたものがありました。
それは 一羽の小さなナイチンゲールで、小鳥は 彼の庭の沢山の美しいバラを とても素敵だと思い 毎日飛んできては、夜に美しい声で歌いながら、かぐわしいバラたちよりも もっと心引かれる、若い学生の心を慰めるために 優しく 暖かい歌声を送り続けていました。

 小鳥は、自分の大切に思っている学生が、あるとき 急にやつれて悲しげで、元気なく苦しそうにしているのを見て、そのわけを知りたいと思いました。

 夜、ナイチンゲールの歌声を耳にした学生は、窓を開け、かすかな夜風を受けながら、思わず 心のうちを いかにも辛そうに言葉にし、そのつぶやきを聞いたナイチンゲールは、 いつも自分の歌声を微笑んで 心待ちにしつつ、楽しんで聞いてくれていた学生が、綺麗な少女に心奪われていることを知って、その小さ胸を痛めはしましたが、でも 元来 優しいその小鳥です、自分の大好きな大切な若い学生のために、どうにかして 彼の欲しがっている 紅いバラを手に入れてやりたいと 強く思うようになりました。

 ナイチンゲールは、その庭で一番美しい真っ白に輝くバラに たずねました。
「どうして、この庭には 赤いバラがないのでしょう?赤いバラが一本あれば、私のあの人は 幸福になれるのに・・」
「どうしても 赤いバラが欲しいのなら、ひとつだけ方法がある。だが、それはとても難しいが、やってみるかね?」

 その庭で一番美しいまっしろに輝くバラは、試すように 小さな小鳥にいいました。

「ええ!勿論ですとも。私の大事なあの人が 幸せになるために私に出来ることがあるのなら、たとえ 地の果てへだって 三日で行って戻ってきますよ。」

 ナイチンゲールのその言葉に、白く輝くバラはうっすらと笑いを浮かべて言いました。
「別にそんなに遠くに出かけてくたびれてしまうようなことはしなくていいのさ。
お前さんが 自分の大事な 世間知らずな若者のためにできることは、ただひとつ、お前さんのその小さな胸に 私を押し当てて、私のとげからお前さんの真っ赤な血を吸わせてくれればいいだけさ。そうすれば 私は お前さんと あの世間知らずな若者の欲しがっている 世にも美しい深紅のバラになれるのさ。 」

 さて、その日も、若くて貧しい世間知らずな学生は、行ったところで 少女のことで頭がいっぱいで、勉強なんか まったく手につかない状態の学校へ それでも出かけるために、夜毎の涙で湿った枕の上で 目を覚ましました。
 すると、彼のその枕もとに、なんと 美しくてがくわしい深紅のバラが一本、そっと置かれているではありませんか!

 彼は あまりに思いがけない出来事に 最初は 一体何が起こったのか、まだ 夢の続きのようなはっきりしない頭で アレコレ考えていましたが、だんだん それがまったくの事実なのだということがわかってくると、服を着るのももどかしく、食事もしないで、その 真っ赤な美しいバラを一本もって、大変な勢いで家を飛び出していきました。

 息を切らし、髪を振り乱し、でも うれしさに興奮して白い頬を赤く染めた学生は、自分の恋する少女を見つけると、誇らしげに その美しい深紅のバラを 差し出しました。

 少女は、そのバラを見ると、まぁ なんて綺麗なバラなんでしょう!と いいはしましたが、手にとろうとしなかったので、学生は 不審に思いながらも、さぁ、とバラを差し出しました。
  が、少女は、その愛らしい顔を ちょっとしかめ、その華奢で滑らかな 薄ばら色の肩をすくめて こういいました。

 「確かに綺麗なバラね。でも 今度着ていくドレスには 似合わないわ。私には 宝石のほうがきっと似合うわ。」

 若い貧しい世間知らずな学生は、今、あまりの怒りのために、わき目も降らず ずんずんと所かまわず歩いていました。そうしないではいられないほどの怒りだったのです。
 しばらく歩いて 多少 気が落ち着いてきた彼は、ふと 手にしている赤いバラを見て、ふたたびむらむらと怒りが湧き返してくるのを感じて、まるで 世界で一番 汚いものを手にしていたかのように、顔をしかめ、おもいっきり バラを通りの道に投げ捨ててしまいました。

 美しくてかぐわしい深紅のバラは、投げ捨てられた拍子に溝に落ち、ちょうど そこを通りかかった 重い荷物を沢山積んだ荷車に轢かれ、ぐしゃぐしゃになり、それがバラだったことなど 誰にも分からないほどに 泥にまみれてしまいました。

 若くて貧しい世間知らずな学生は、「愛とは何てくだらないものなんだ。」と 吐き捨てるようにつぶやきながら、自分の家の部屋に戻って 遅れていた勉強を始めました。

 長いこと机に向かっていた彼が気が付くと もう日がしずみはじめるころだったので、彼は窓を開け、いつものように 心に染み入るように慰めてくれる 優しいナイチンゲールの歌声を聞こうと耳をすませました。

 が、その日、耳慣れたナイチンゲールの歌声は とうとう 夜中になっても聞えることはありませんでした。
 しかし彼は だからといって それを気に病むほど、その小鳥を大切に思っていたわけではなかったので、その日は残念に思いながらも、それっきり ナイチンゲールのことなど 忘れてしまいました。

 若くて貧しい世間知らずの学生の家の庭には、沢山の美しいバラたちを あやすように 甘い夜風が そっと通り過ぎていきます。
 かぐわしく咲く たくさんのバラの茂みの奥深く・・、胸を紅く染めた 小さなナイチンゲールの冷たいなきがらのあることなど、誰も気が付くことなどないほどに それはあでやかに 今を盛りと 咲き誇っていました。


 このお話は ご存知の方 おおいでしょうね。 

まず。。オスカー・ワイルド様、勝手にアレコレつけたし書き並べて ごめんなさい。

 しかしながら・・ まぁ なんと救いのないお話ではありましょうか・・。

いいですか、ただいま恋愛中の皆様。
 大体が 自分が心傾けるだけの値打ちある相手であるかどうかが わからなくなっているにもかかわらず、ひたすら 相手の思うような自分になろうなんておもうような時は、とりあえず、恋は盲目 という言葉を思い浮かべてみることを お薦めいたします。

 自分が思うほどには 相手は自分を思っていないかもしれない、あるいは 自分が望むようには 相手は自分を思ってはくれないこともある ということを、別に誰に恋しているわけでもない時などだったら 当たり前に分かりそうなことが、その時になると まったく思いも至らず、まいどまいど 同じように情けない思いや 切ない思い、辛い目にあったり 苦しい時をすごしたりするものであるという・・、恋愛期 真っ最中を その毎度毎度とともに経験した者の、せめてもの気持ちをこめての アドバイスではあります。

 それでもね、やっぱり また 同じことの繰り返しなんですよね。それが恋愛というものなんでしょう。

 だから、是非 一日も早く 本当に愛することができるように、と 恋愛に悩む皆様のために 願っています。

 人の愛し方ってほんとにすごく個人的なことなんだなと これを読むと思う遠藤です。

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