9月のお話  一羽の白鳥
 

 

 やぁ・・ なんて 明るい夜だろう!

 今日のお月様は とても きれいだなぁ。 
  もっとも コレくらい明るくないと 僕らはとてもこんな広い海の上を 夜飛ぶなんてこと 出来ないけれど・・。

 しかし、みんな 本当に よく飛ぶなぁ・・。

 今日中にこの海を渡らなくちゃならないといっても、もう 何時間休みなしで飛んでいることだろう。
 
 みんな 疲れないんだろうか? 僕は・・  ぼくは 少し 疲れてきてしまった・・
 どこかで 休んでくれないだろうか。 だめだろうな。

 このところ 天気が悪かったから なかなか 距離を稼げなかったし、今日 この海を渡ってしまわなければ、いまよりもっと いつもの湖に着くのが遅れてしまうんだもの。

 

  その白鳥は 仲間たちと群れ成して 明るくこうこうと輝く月に照らされた海の上を 暫く前から 北を目指して 飛んでいました。

 海は このところの悪天候を忘れてしまったような とろんとした静かな波が そっと夢を見ているようでした。 

 経験豊かな隊長を含む年配の白鳥たちが 不安を置いても決心したように、確かに 今日 彼らは 海を渡ってしまわなければなりませんでした。

 今年は とても 天候が悪く、いつ出発しようかと 散々に迷いに迷い、もう これ以上は と決心して 隊長以下 全員が無理を承知で 雨の中を飛び立ってきたのですから、今 ここで ぐずぐずするわけには行かないのです。

 みな 必死で 一生懸命翼を動かしていました。 どうしても 明日の朝には 北の陸地にあるいつもの湖に着いていたかったし、せめて その一つ手前の沼地までにであっても 着いていなくてはならなかったのです。

 そんなことは その若い白鳥にだって 十分分かっていました。
彼は これが 2度目のフライトでしたが、少し前に いきなりやってきた猛暑にやられ、自分としては 十分に休んだつもりでしたが、それが こんな大事なときに たたってしまったのでした。

 ああ・・ つらい・・ 翼が付け根から 取れてしまいそうだ・・ 
 いたい・・
 
  いたい・・

 でも みんな 同じなんだ。きっと 痛いのを我慢して飛んでいるんだ。

 でも、でも・・。

 

 さっきから 私の光で 滑らかな海の上に くっきりとした影を落としているのは 沢山の白鳥の群れ。
  そうそう、ここより南のほうで 彼らが旅立ちの準備をしているのを 数週間前に見たっけ・・。

 ずっと 天気が悪かったから、こんな夜にも 飛ばなくちゃならなくなってしまったんだねぇ。
 せいぜい 一生懸命 明るくするよ。 だから しっかり飛んで、朝には 北の住まいに着くように ね。

 ・・おや? あの白鳥は どうしたのかな・・。
 あ ・・ あ、落ちていく ような・・?  ああ そうだ、疲れてしまったんだろうか

 しかし こんなところで 一体どうしたって言うんだろう・・

 

  だめだ・・ もう 翼が動かない・・。 みんな、 隊長・・! 

 すみません。

 

 ああ、落ちていく・・ 落ちて・・
 きっと とても 苦しいに違いない。つらいだろうに。 

 でも それでも さすがに白鳥だ。高い空から見ている私には 彼の姿は まるで 水に浮かぶ白いはすの花のように見えるよ。 

 そうだよ、大丈夫さ。 ゆっくり休むといい。私が見ていてあげよう。よく翼を休めて 皆の後を追えばいい。今は そうやって 優しい波に揺られて 休むがいいさ。

 静かだ・・ まるで 小さい時に巣の中で迎えた 冬の初めの朝のようだ。
母さんは 僕が目を覚ましたのを見て そっと くちばしで僕の頭をなでてくれた。
 いい子だから もう少しお休み、もうすこし 夢の続きをみておいで といって・・。

 母さん、僕は すこしだけ休んで すぐに後を追うから ね。心配しないで。ぼくは 母さんの子だから、ちゃんと 追いつくよ。

 ただ 今は 少し眠いんだ・・。すごく 疲れて ねむくてしょうがない。ごめんね いつも心配ばかりかけて。でも 大丈夫だから。ちょっと 休むだけだから・・

 うん・・ 休むがいいさ。海も お前を休ませてくれているじゃないか。私も お前を見ているよ。しばらく ゆっくりするがいい。 

 魚たち、静かにしてやっておくれ。 彼の眠りを守っておやり。

 

 首を 羽の間につっこんで休む白鳥の白い体は、海の青の 月の光を受けて燃え立つひそやかな炎に洗われて 夢さそう波に揺られておりました。

 やがて 東の水平線に近い空に、柔らかな ばら色の朝日が 少しずつ ゆっくりと 空を染め始めるころになりました。

 朝日が 若い白鳥を優しく包み、その日差しの暖かさに目覚めた彼は、十分に休んだ自分の翼が すでに回復していることを 知りました。

 

  そろそろ 私も 眠る時間だ。あの若い白鳥は どうしただろう?

ああ、大丈夫だったんだな。 

 さすがに 若いなぁ・・、回復が早い!

 もう 大丈夫だ、こらから飛び立てば 彼なら 今日の夕方には みんなに追いつくだろう。
 やぁ よかった・・。 無事に みんなに会えるように 祈っているよ。
  元気で お行き!

 

 一晩中 月の光を受け続けていた広い海にただ一羽、白い花のように浮かび漂っていた白鳥は、長く伸びた美しい首をしっかりともたげ、朝日に向かって 大きく羽を広げると、数回 力強く羽ばたいて ふわっと海から飛び立ちました。

 

 胸に憧れを抱いて! みんなの向かったほうへ・・

 朝日を右手に 北の大地の あの湖を目指して!

 


  これは アンデルセンの『絵のない絵本』のうちの一つです。

 元は すっごく 短くて、こーんなに長いお話ではありません。
  毎度のことですが、脚色by遠藤です。

 なんというのでしょうね・・ 映像的 というのか、そう、たしかに 絵本だと思いますね。  「すごい」ものです。。

 原作をご存じない方は どうぞ 一度 お読みください。
 こんな しょうもない作り話なんぞよりは よほど美しく 簡潔な読み物で きっと満足なさることと 思います。

 いろいろなことを 考えます・・ この話では。

 でも あれこれ 個人的に思うことを 述べ立てるのは 今回は 特に控えます。これだけ すっかり 変えてしまったんですから。

 

 今日は 満月だそうです。(9月15日)

 お月様は 今晩 どこの だれの 何について 話してくれるでしょうね。
  月の出が待ち遠しいです。 

 白玉粉のお団子を フルーツ白玉にして、お月見をしましょう。 
 
  当然 一献かたむけつつ・・ ね。 

 

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