2月のお話  幸福の王子

 

 

 ある国のある大きな町の真ん中に、高い柱がそびえたち、その上に『幸福の王子』と呼ばれる若い王子の像が立っていました。

 その像は、全身に金箔が貼られ、輝く瞳にはサファイアが、腰の剣には大きなルビーがはめ込まれていました。

 『幸福の王子』は人々の自慢であり、誇りでもありました。それは、自分を大した者だと思っているような議員たちや学者たちにとってもではありましたが、ただ 彼らがその像を自慢するのは、金箔やサファイアやルビーのことであり、べつにそれが王子でなくても良かったのかもしれません。

 ある日の夕暮れ、街にちいさな一羽のつばめが飛んできました。
仲間たちは もう とっくの昔に、エジプトに向けて飛び立っていましたが、このツバメは どうしても離れがたい恋人のために、出発が遅れてしまっていたのでした。
 その彼女が、ツバメが旅立つというのに、一緒に行くのを嫌がったのです。もっとも 彼女は水辺の葦−それも 見事になよやかな腰つきの−だったので、仕方の無いことではありましたが・・。

 そんなこんなで ようやく さっぱりと彼女と別れたそのツバメは、仲間たちの後を追って、通り道になるこの街にやってきたのでした。

 「さて 今日は どこに泊まろうか・・。どこか いいところはないかな。」
ふと、ツバメは 街の真ん中にある高い柱をみて飛んで行き、立派な金色の台座に羽を休めることにしました。

 「いい場所があったな。今夜はゆっくり眠れるぞ。」
ちいさな黒い頭を 翼の中に入れて、さぁ 眠ろう、と思ったとたん、大きな水滴がぽつりとツバメの上に落ちてきました。

 「ええ?!雨かい。いや・・、しかし とくに降っているようでもないぞ。」
不思議に思ったツバメは、上を見上げて びっくりしてしまいました。

 見上げた先には 立派な様子の美しい若者の像の黄金の頬を伝う、大粒の涙がありました。月の光に照らされて、明るい空色の瞳が濡れているのを見たツバメは、その若者をとてもかわいそうに思い、そっと その肩先に止まって 静かにたずねました。

 「もし、あなたは 一体どなたですか?どうして 泣いておられるのです?」
「私は『幸福の王子』だ。私は 今は こんな風にたっているだけだが、まだ人の心を持っていたころ、私は涙を知らずにいた。」

 そして王子は、まだ王子として宮殿の中で、毎日 美しいものに囲まれて、素晴らしいことや楽しいことが繰り返し行われ、たくさんの人たちに愛され大事にされて、幸せに暮らしていたころのことをツバメに話して聞かせました。

 「ただ、そのころの私は 宮殿の外については 何も知ることはなかったのだ。私は 快楽や贅沢が幸福だというのなら、確かに幸福に生きて幸福に死んだといえるだろう。
 私が死んだあと、人々は いかにも私を幸福の象徴のようだったからといって、この高い場所に 私をおいた。
 ここからは、街の様々なことが、良いことも悪いことも、酷いことも幸せなことも、悲しいことも嬉しいことも・・、全てが見渡せる。私は、生きているうちに知っておくべきだったことを、こんな姿になって ようやく知るようになったのだ。
 人々に、あまりに辛く 気の毒なことなどがあれば、それは いかに私の心臓が鉛でできていたとしても やはり痛む。それで 涙を流れてしまうのだよ。」

 金色に輝く王子の心臓が鉛 というのは、ツバメにはびっくりしましたが、でも『幸福の王子』の言うことは よくわかりました。

 「たとえば、この目の前の通りのずっと向こうにある小さな通りに、貧しい家がある。今 窓が一つ開いている。それは窓に近いところにある粗末なベッドに寝ている その家の子供が、熱でからからに乾いた喉を潤すためにオレンジがほしいと、力なくうめくので、すこしでも涼しいようにと、生活と看病に疲れたやせた母親が 窓を開け放っておいたからだ。
 母親は お針子でね。次の舞踏会の日までに、美しく刺繍の施された舞踏服を作ることを請け負っているのだが、疲れのために、今は 子供のベッドに突っ伏して眠っている。」

 ツバメは じっと耳を傾けていましたが、なんとも胸の痛いことではありました。

 「小さなツバメよ。私の剣のつかからルビーを取ってはくれまいか。そして それをあの母親に届けてほしいのだ。いけるものなら 私は今すぐ行ってやりたいが、この両足は、ごらんのとおり 台座に固定されているのだ。」

 「王子様。お気持ちはよくわかります。でも 僕は すぐにもエジプトに旅立たなくてはならないんです。もう 仲間たちは すでに ナイル川に沿ってさきをいそいでいることでしょう。」

 「小さなツバメよ、私の願いを聞いておくれでないか。今晩一晩、ここに泊まって私の遣いをしてくれないだろうか。あの子は とても喉が渇いていて、でも オレンジ一個を買う金もなく、母親は悲しみつかれきっている・・。」

 ツバメは、確かに気の毒だとは思いましたが、でも やっぱり 早く出発したくてたまらなかったのです。どうして こんなところにきてしまったのかと悔やみながら、いろいろと言い訳をし始めましたが、王子が ソレを聞きながら あまりに悲しげな様子をするので、だんだん 気の毒になってきて、終に こういいました。

 「分かりましたよ。ここは 寒いですが・・、もう一晩泊まって、あなたのお役に立ちましょう。」
 「ありがとう!小さなツバメ君!」

 ツバメは それから 王子の剣から大きなルビーを小さなくちばしでつついてはずし、それをくわえて 街の屋根の上を飛び越えていきました。

 にぎやかで 美しい灯かりに輝く大きな家々を越え、向こう側に広がる暗い低い屋根の重なるような当たりの川沿いのはしっこに、さっき王子が話していた壊れそうな家があり、そして 窓が開いていました。

 ツバメは 寝苦しそうに寝返りを打って横を向いた子供と、疲れ果ててうつぶしている母親のそばを通って、テーブルの上の指ぬきのそばにある布の上に、大きな赤いルビーを置きました。

 それから、子供の近くへ行って翼で 熱い額を扇いでやりました。
「ああ・・、とても涼しい。」 と 子供はほっとしたようにつぶやき、目をつぶったままにっこりすると「きっと 僕は元気になる。」と 言いながら、心地よい眠りにつきました。

 ツバメは 王子のところに戻って、自分のしたこと、見てきたことを 話して聞かせました。そして 言いました。
 「今日は 本当に寒いですね。ですが、王子様。僕は 今 とても暖かな気分なんですよ。」

 それを聞いた王子は 微笑むことも出来ない顔の美しい瞳をきらりとさせていいました。
 「それは、君が良いことをしたから だろうよ。」

 それから ツバメは 王子の足元にうずくまって 眠りました。

 翌朝、ツバメは 王子に言いました。
「僕は 今夜、エジプトに行きます。」そして 街中の有名なところを見たり、街の雀たちに 旅の話をして聞かせてうらやましがられたりして いい気分で 午後 王子のところに戻ってきました。
 「もうすぐ 出発します。お世話になりました。」

 すると 王子はいいました。
「小さなツバメよ。もう一度 私のために 飛んでくれまいか。」

 ツバメは ほぅっと 小さなため息をつくと こまって言いました。
「えーっとですね。僕は 今日 出発しなくちゃならないんですよ。もう 仲間たちは ナイル川を上りきって大きな滝のところへいっているころでしょう。それはそれは 美しいところなんですよ。」

 王子は それには答えずにいいました。

 「聞いておくれ、小さいツバメ。ずっと向こう。街の反対側にある下宿屋の屋根裏部屋に、一人の若者がいる。彼は 芝居を書いているのだが、あまりの貧しさのために、部屋を温めるためのものも買えず、空腹も度を越して 今にも気絶しそうなのだ。才能あるその若者を助けてやりたいのだよ。ツバメ君。」

 ツバメは 諦めたようにつぶやきました。
「分かりました。でも 今晩だけですからね。で 何をすればいいんです?」
「私の目はサファイアで出来ている。これは 大変貴重なものでね、大昔にインドから運ばれたものなのだ。私の片目を抜き取っておくれ。そして 若者のところへ持っていってやってくれないか。彼は それを売って、食べ物とまきを買い、温かくなって元気を取り戻して、きっと芝居を完成させることが出来るだろう。」

 ツバメは 目を伏せて 低い声で言いました。
「王子様・・、それは。王子様の目からサファイアを抜き取るなんて・・、そんなこと 私には 出来ません。とても 出来ません。」

 王子は ひどく困って うろたえているツバメに やさしく命じました。
「やってくれるね。君が そうしてくれることを 私は 知っているよ。」

 ツバメは、サファイアをくわえて、穴の開いた屋根裏部屋の屋根から飛び込んで、あまりの辛さと苦しみに、動く気力もなえて両手に顔をうずめている若者のそばの花瓶の 枯れかかった菫の上に そっと置きました。

 ツバメは だまって 表に出て、しばらく 様子を見ていました。
若者は、のろのろと顔を上げると、机の上に 見慣れないもののあるのを発見し、恐る恐るそれを手にとって見ました。

 次の瞬間、彼は それを握り締めて大声で叫びながら、上着をはおり、急いで 宝石商へ向かって ふらつく足取りながらも 急いで階段を駆け下りていきました。その顔は、喜びに溢れ、いかにも幸福そうでした。

 次の日、港では 大きな船が これから出港するための準備でにぎわっていました。「僕も 出発だ!」 ツバメは 胸を膨らませて 嬉しそうに飛び回り、王子のところへ お別れを言いにやってきました。

 「それでは、王子様。僕は 行きます。」

 すると 王子は言いました。
「小さなツバメよ。お願いだ。もう一度でいいんだ。私のために とんでくれまいか?」

 「王子様。僕はツバメで、南の鳥です。ここの冬の寒さは 我慢できないのです。エジプトから 来年戻ってくるときに、あなたに 南の海の青のサファイアをお土産に持ってきますよ。」

「ツバメよ ツバメ。小さなツバメよ。」と王子は言いました。「もう一晩だけでいい、泊まっておくれ。」

 ツバメのサファイアのお土産話には答えずに、王子は言いました。

「下の広場を見てくれ。ほら、あの女の子、小さな子供。靴も靴下も この寒いのに履いていない。冷たい風が吹くというのに、頭を覆うものも無い。
  あの子は マッチを売っているんだ。でも さっき、持っていたマッチを全部 溝に落としてしまったのだ。あの泣きようをごらん。あの子には 何もどうすることも出来ないのに、たった一つ帰れる場所に戻れば、大事な商売道具をだめにしたといって、父親からひどくぶたれてしまうのだよ。」

 ツバメは ため息をついて言いました。
「・・で、僕は どうするのです?」
「ありがとうよ、ツバメ君。もう一つ 私には サファイアがある。それを抜き取って あの子に届けてやってくれたまえ。そうすれば あの子は父親からぶたれずにすむのだから。」

 「王子様!王子様、おっしゃることは よくわかります。僕は あなたがとても好きになっていますから、あなたのお役に立つためならば、わかりました、もう一晩泊まりましょう。
  ですが あなたの目からサファイアを抜き取るなんてこと、到底出来はしませんよ。だって そんなことをしたら あなたは 何も見えなくなってしまうではありませんか!」

 王子は 優しく命じます。
「持って行ってくれるね。それが私の望みなのだから。」

 ツバメは できるだけ 急いでサファイアを抜き取って下へ行き、真っ赤に腫れあがったしもやけの手で 後から後からあふれ出てくる涙を拭きながら泣きじゃくっている女の子のそばで 羽ばたきました。

 女の子は 何がきたのかとおもって目を見開き、そばに 黒い小さなツバメが、きれいな玉をくわえて 羽ばたいているのを見ました。
 女の子が 両手を差し出したので、ツバメは その手のひらに、加えていたサファイアをそっと 置きました。

 びっくりしてキレイなきらきら輝く青い玉を見つめている女の子を後に、ツバメは 王子のところへ 戻ってきました。
 王子の肩先に止まったツバメは 女の子が 右手をぎゅっと握り締め、嬉しそうに笑いながら走っていくのを見ていました。

 その様子を ツバメから聞いた王子は
「よかった・・!ちいさなツバメよ。本当にありがとう。
さぁ、早く行ってくれ。ほら、雪が降ってきてしまった・・。」

 「王子様。僕は あなたと一緒にいることにしました。もう、あなたは 何も見えないじゃありませんか・・!僕は あなたとずっと一緒にいることに決めましたよ。」

 王子は、心からすまないと思いましたが、ツバメの心をとても嬉しく思いました。 ツバメは いつものように 王子の足元で眠りました。

 次の日は、晴れてはいましたが、とても寒くて 冷たい風は 高い像のあたりを ヒューヒューと飛び交っていました。
 それでも ツバメは 王子の肩に止まって、今まで見てきた たくさんの目ずらし物や 面白かったいろいろな出来事を、話して聞かせました。

 王子は それを 楽しそうに聞いていましたが、ふと こういいました。
「小さなツバメよ。君は なんと多くの経験をし、いろいろなものを見聞きしてきたことだろう。それは 大層な驚きだ。しかし、その驚きは、今 苦しみを受けている人の悲しみ以上のものとはいえないだろう。

 小さなツバメよ。私は 今はもう 何も見えない。だから お前が私の目になって、街へ行き、その目で見たことをはなしておくれではないか。」

 ツバメは 北風の吹く街中を飛び回り、見てきたことを 一つ残さず 王子に語って聞かせました。

 「贅沢な屋敷の門の前に 乞食がいます。この寒いのに、穴の開いたぼろを、ほんの2〜3枚来ている程度です。でも 贅沢な屋敷に住む金持ちたちは、乞食を見ても 何もやりはしません。
  暗い路地には おなかをすかせた子供達が、ぼんやりと壁にもたれて 寒さをよけています。
  橋の下では、幼い兄弟が抱き合って 温めあっていましたが、警官がやってきて、そこから立ち退けというので、雨が降っているのに、かわいそうに 二人は橋の下から出て行きましたよ。」

 王子は そのたびに、体の純金をはがし、それをそれぞれの苦しむ人に持っていくように、ツバメに言いつけ、小さなツバメは 王子に言われたとおりにするのでした。

 やがて、雪が降り、霜が降りて、すっかり真冬になりました。
それでも ツバメは パン屋の店先でパンくずを食べながら、なんとか 王子の役に立ちたいと 一生懸命頑張っていました。

 でも、ある日、ツバメは「その時」が来たことを知りました。

 小さなツバメは、残っているありったけの力を振り絞って 王子の肩先に止まり、力の失せた声で 王子の耳にささやきました。

 「王子様。私の王子様・・、さようならをいいます。」

 王子はソレを聞いて 少し寂しく思いましたが、十分に自分の願いのために働いてくれたツバメを思って言いました。

 「そうか。とうとう エジプトに行くのだね。ありがとう。小さなツバメよ。私のために、君は 本当に ずいぶんと働いて、この寒い中に長く居続けてくれた。ありがとう。心から感謝するよ。どうか げんきで!」

 「優しい大事な王子様。私は エジプトへは行かないのです。死という眠りにつくのです。」

 そういってツバメは 王子の肩先から その唇をかすめて、王子の足元に落ちました。

 その瞬間、鉛色の王子の像の中で なにかがはじけるような 奇妙な音がしました。 それは 王子の鉛の心臓が 真っ二つに裂けた音でした。

 その日は、本当に とても ひどく 寒い日だったのです。

 その次の日、街のお偉いさん方が 一団となって像の下を通りかかったとき市長が、王子の像が すっかり鉛色になっていることに気づいて言いました。

 「おい、なんだって こんなにみすぼらしい汚らしい像を『幸福の王子』だなんていうんだ?!」

 市長にお追従を言うのが仕事の議員たちは、口々に まったくだ と言いました。

 「ルビーやサファイアは どうしたんだ?なくなってしまっているじゃないか。体も金だったはずだ。それなのに なんて姿だ。これじゃ 不幸の王子ではないか。こんなもの おいておく必要は無い。すぐに撤去だ!」

 すぐに撤去だ!と議員たちは 口々に叫びました。その中の ひとりが 台座の上に ツバメの死骸のあるのに気づき、それを市長に報告したのですが、市長は そんなもの ゴミと一緒に捨てて来い といったので、そのようになりました。

 王子の像も 早々に 引きずり下ろされ、炉で溶かされて 改めて市長の像を建てることになったのですが、どういうわけか、どんなに温度を上げても、像の中の心臓だけは 溶けていかないのです。

 もう これ以上 どうしようもないとされた 王子の心臓は、ただのゴミとして ゴミために放り投げれました。

 王子の心臓は たまたま 死んだツバメの死骸のそばに落ちました。

 一人の天使が 灰色の寂しげな空から ゆっくりと舞い降りてきました。

 天使は 神様から この街で 一番美しいものを 持ってくるようにと言われてやってきたのです。

 天使は 街はずれのゴミために目を留めると、近づいて 身をかがめ、何かを拾って 天に帰りました。

 天使の持ってきた 二つに裂けた鉛の心臓と 小さなツバメの死骸をごらんになられた神様は、優しく微笑まれるとおっしゃいました。

 「よろしい。良く選んできた。
この小さな鳥は 私の国で永遠に喜びの歌を歌い、その同じ国で この幸福の王子は 永久に私を賛美するだろう。」

 

 

 
  このお話は 皆さん きっと ご存知のことと思います。

 一度聞いたら それこそ 簡単には忘れられるものではないでしょう。
オスカー・ワイルド という人は、人についての理想があって、それを 分かりやすく 美しい物語にしてしまえる人だったのですね。

 これは、生きているときは 知ることもなかったし、知ろうとすることも無かった、一人の何不自由ない暮らしをしていた王子が知らずにいた、自分のいた国の町に住む人々の暮らしを 高い台座の上にたって 初めて知ったことから 展開していくお話です。

 できるときに出来ることをしておくべきだった という後悔を、思います。

 動けなくなって初めて、王子は 何も出来ずにいる自分を嘆きます。
それは 鉛の心臓であっても 涙を流さずにはいられないほどだったのですね・・。

 そういえば、なんとなく 似たようなことって ありますよね。。
いろんなことが 身近であったと思うのです、だれのこれまでにも。
だけど 気が付かなかったこと というのは、多分 いくらもあるのではないでしょうか?

 気が付かなかった、知らなかった というのは、別にいけないことではありません。だけど、そういうことは この時代なら尚のこと、すこしでも知ろうとさえするならば、なにかしらの情報を得ることは さほど難しいことでもないでしょう。

 私たちは、知ろうとせずに済ませていることが 幾らもありますよね。
このお話の中にあるような事柄にちかいことは、この一応先進国といわれる今の日本にも たくさんあることを、私たちは気づいてしまっています。

 例えば失業を余儀なくされたり、年を取って不自由なまま寂しく暮らしていたり、ただ気に食わないからといって 始終追い詰められ続け、挙句命をたつようであったり、生まれて数年ほどしか生きていないのに、保護すべき者から 酷い仕打ちを受けていたり・・。経済的に、精神的に、そして物理的に、環境的に・・・、いろいろな形で 人として あたりまえとおもわれている安全や安心、現実的な保護や手助けなどを失っている人たちを、私たちは 知っているはずです。

 私には 残念ながら金もなければ、ルビーもサファイアもありませんので・・、さて では できることはないのかなと考えたとき、自分の場合なら、やはりこれは語り継ぐことや表わしていくこと、あるいは実際に足を運んでできることを探してやってみることなどなど、もっと考えれば いろいろにあるでしょう。

 ただ、そういうことに心傾けるために必要なことは たった一つ、絶えず関心を寄せているようにする(ひつじ小屋だより51「愛すること@」参照)ということだろうと考えます。
 何かを知ったからといって 何もできない自分を見続けることになるかも知れないとしても、それでも いつか 何かが出来るはずだから と 現実の悲惨から 目をそらさずにいることだけでも、私たちが しなくてはならないことだと思うのです。

 レストランで食事をするとき、考えてみてください。
その一品を作ったのは だれか、と。その一品のために必要な食材は 誰がどうやってそれまでにしたのか、その一品を作るために必要だったものはいくつあり それぞれどんなものだったか、そして それらはどうやってそこに集められたのか。
  そこで食事をするためにしつらえられた空間には 何がどのように使われ それらはどこからどうやってそこへ集められてその形になったのか・・などなど。ほかにも もっと考えれば もっといろいろに たくさんのことについて 考える材料はあります。

 それらの中には、私たちの口にするものなど これまで一度も口にしたり、持ったりしたことのないところの人たちの手によって作られた物だってありましょう。
 たまたま 今はそういう風ではないけれど、何かの時には 自分だってその立場になるかもしれないとおもえば、とても 単に他人事では済まされなくなります。

 1500円のランチのときには 1800円のものを食べたつもりで、差額を寄付することは、ちょっとしたことではありますが、出来ないことではないでしょう。

 大事なことは、自分自身や自分の目の届くところのことまでのことを 世の中といわないこと です。
 見晴らしの良い高い台座の上に立って、広く見渡すことの出来ない私たちは、地面に近いところで日々暮らしていますが、その地面が 海を越え山を越えて 世界へと人々を導いていることに 気付かなくてはならないのではないか ということも考えさせられた この『幸福の王子』でした。

 

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