ひつじ小屋の風景 47 過渡期
暑くなると蒸してきて、風の凪いだ日はとくに、たまらない不快感を感じるようになった。それでも 目を表に転ずれば、木々の緑は清々とし、その勢いは鮮やかな季節の花にも劣らないほどで、其れを思うと この滴り溢れる水の量もそうあるべきからこそなのか・・と一応納得したつもりにもなってみたり・・。(そんなに物分り良くないですけどね・・)
そのころからなのか どうなのか、ふと最近 自分の肌がやけに弱くなったようなことに気が付いた。汗がしみるから始まって、かゆみ、肌荒れは当然のことながら、今まで経験したことのない 肌のトラブルが次々に起こってくるのには、まったくもってうんざり。
が、それも この自分のこと。あんまり長い期間 そうしたことが繰り返されると、なんだか それがもともとの自分のようであったかのごとき錯角?を感じるのか、このところは そんなもんだ、に なってしまっている。
ところが、不思議なことに、そうおもったからなのかどうか、これまた全く分からないのだが、そんなもんだ、と思い始めた頃から なにやら ひどい肌荒れは一応収まる兆しを見せ、かゆみは時々のものとなり、掻き壊した部分の傷跡も それなり回復へ向かっているようになってきた。??? 一体全体 なにがなんだか・・???
思い当たるといえば、やはり『体の変わり目』ということではあるが、恐らくその推測はあたっているだろう・・。
人間、半世紀以上も生きていれば もうお役もごめんになって当然というか、そうならなかったらかなりの負担を、引き続き いつまでもこのくたびれた体に強いることになる。自身について言えば、若い頃の大病の後、人一人をこの世に生み出す命がけの大事業を5回も繰り返したこの体を、そろそろ 自堕落なくらいに好き勝手にさせてやりたいと 思っているのだが・・ (わかってます、もうすでに ずいぶん好き勝手しておりますです・・ はい・・。)
人の体というのは 実によくできていて、やはり女性の場合、その最盛期には、妊娠出産という女にしか出来ない、生命を生み育むという、全人類的発展に時間と生活と肉体と精神を目いっぱい貢献するべく、その成長をもって、その体の発育は行われていく。
そして 生み出した一人一人が それぞれの道を その足で歩み始めてしばらくの後、肉体において そのための役目を終えた体は、
充分行い尽くした"命を産むことのできる能力"に終止符を打つことにより
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photo by L.
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次は その者自身の命を十分に行い まっとうするための準備に入っていく。
こう書くと なんだか ものすごいことをしているような・・、でも実際 そうなんですから・・
まぁ 色々書いてみましたけど、つまりは 更年期 ということだと思うのですね。
それにしても 肌トラブルに始まって、生理的な問題とかもふくめて、言葉にしてしまえばそれっきりですが、やっぱりなってみなくちゃ分からないなー と つくづく。。
私などは、仕事柄 女性の体の変遷については、一般の方たちよりはかなり詳しく 事細かに知識はあったのです、が、それでも 実際に自分の体にそういうことが起こってみると、ははぁ なるほど・・あれはこういうことだったのか・・!と いまさらの感を呈することもしばしば。
なんとも 不可思議にして 神秘なるは やはり女体 となりましょうか・・?
この 蒸し暑く、うんざりするような日差しの中にあって、明日には その求め続けてきた日差しで 己が焼かれてしまうかもしれないにもかかわらず、なお生き生きと、さらに日差しを求めて背伸びするおおくの花々の生きる勢いを見ながら、『生きる』というのは 『最期まで行ききること』を言うのだなぁ・・と、新しい発見のように 命の意味を見出したような気のするを自覚しつつ、これから先のもう少しある残りの人生を 如何によりよく生きたものであるか・・など、自分の体の変化を持て余しながらも、なんとか問い直し始めているこの頃 ではあります。
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