いまどきは もう 4時半を過ぎれば、ほとんど あたりは暗くなり、ついで日が落ちると 一気に 空気が冷えてきて寒くなります。
実家から戻るときは、たいがい そんな時間をすこし過ぎたころになるのですが、歩くのを除いてなら、バスに乗って15分程度の行き来とはいえ、それが週2度となれば、交通費のことも考えるので、行きは ともかく、帰りくらいは 多少の節約をと、二つ先のバス停から 帰りのバスに乗るようにしています。
そのバス停までの間、歩道があるといえばありますが、人がすれ違うのも 片方が身を寄せるか、手前で 相手の通り過ぎるのを待つか、というほどのもので、反対側にいたっては、そんなものを歩道とはいえないようなところを、車の減速を期待することもできずに ただただ せっせと歩かなければなりません。
先日、いくらかは歩道と呼べるほうの道を、薄暗さの増しつつある時刻に歩いていたところ、反対側の歩きにくい方を、杖にすがって、曲がった腰のために、前を見てあるけないのでは、と 思うようなおじいさんが、すこしずつ 少しずつ、歩みを進めているのを見ました。
だいじょうぶかなぁ・・ とも おもったのですが、そのおじいさんの腰からは、くらくてもよく見えるほどの 赤い紐がたれていて、その先には、中型になるのでしょうか、薄いベージュ色の賢そうな犬が、寄り添って歩いていました。
犬は、おじいさんの足元を まるで おじいさんの行く先の安全を確かめるように上手に行ったりきたりしながら、あれでは かえって あぶないんじゃないか、と 思えるくらいの近さにいたのですが、おじいさんは、そんな犬の行動に 特に注意を払うでもなく、黙々と歩みを進めるだけのようにみえました。
それを眺めながら、ふと、そのおじいさんと犬は、何も言わないで居るけれど、お互い きっとコレまでの時間を そうやって歩いてんだろうなぁ・・と 思ったのでした。
それは、なんというのでしょうねえ・・、一人と一匹なんだけど、そこに なにか もうひとつ、その二つの存在の間を行き来するような なにか・・、
それが 一人と一匹の危うさに付き合っているような、そんな気がしたのです。
結構な車の流れのあるところの、向こうとこちらでのことですから、もちろん おじいさんにも犬にも、こちらのことはわからないと思いますが、こちら側からは、後すこしで 闇にまぎれてしまいそうなその様子に、なぜだか、そんなものを感じて仕方ありませんでした。
うまく いえないのですが・・、怖いくらいの頼りないおじいさんの歩みと、ひょっとすると 転ばせてしまうかもしれないほど気遣って?いるような犬のまとわりとに、そっと 添える手があるような・・
そんなことを、実家からの重い荷物をもって、狭い歩道に立ったまま思って、ながめていました。
あのおじいさんとあの犬さんと、、どうか 無事でありますように、と 祈りつつ・・、バス停にむかって 振り返り 振り返り、ゆっくり歩いていきました。
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