Aurea Ovis

きょうは『金羊日』

2009年10月

 

1 こふしぎ(小不思議)なこと

2 秋に鍛える (骨折1)

3 海まで (骨折2)

4 思いやり (骨折3)

 

 

1 こふしぎ(小不思議)なこと

 昨日のこと、畳の上で 腹ばいになって、梨木香歩さんの『家守綺譚』を読んでいた。

 ちょうど 主人公がものを書いているときに、小さな黒い虫が 自分の腕に止まったな と おもったら、それがほくろになってしまった、・・という場面を読んだと同時に、開いていた その本のちょうど真ん中あたりに なにか 小さな黒いものがポトンと落ちたな と思ったら、胸の下、本と畳の間に転がった・・ と 思ったのだ。

 なんだったんだろうかと 目を転じてみたが、何も見当たらないので、身を起こして 恐らくこの当たりに落ちたのではと思われるようなところを 見回したり 手探りしてみたのだが、何も無い。

 羽の生えたもののようには思えなかったし、どちらかというと 5ミリ程度の石の破片のようなものが、自分の読んでいた本の、ちょうど その文が終わったところに ぽとん・・と あたって転がったので、腕にとまった小さな虫が、という箇所を読んだところにそれだから、あれ、こっちもだ・・なんて なんだか 当たり前のように思ってしまって、

 でも 腕じゃないぞ、どこへいった?なんて・・ 探してしまった。

 当方の2階の畳の部屋をご存知の方は お分かりと思うが、あの部屋は 窓に対しての左側一畳弱に 簡単な家具が並んでいるだけで、あとは 何もないので、その部屋で 何かが転がれば、すぐに目に付くし、どこかに紛れ込んで とか どこへ行ったか分からない というようなことはないことは お分かりいただけると思う。

 そして 自分は その部屋の真ん中に 腹ばいになっていたのだ・・

 ・・で、開いていた本の上に、小さな黒いものが 落っこちてきてあたって、自分の方へ 転がったというのに、どこを探しても そんなものが 無い。

 ??? 

 確かに 不思議なことではあるけれど、ごく たまに、そんなことが 自分にはある。

 見間違いとか 思い違い、勘違い など 幾らでもいえるし、そうだといわれても 別に どうということも無いが、ただ 確かに 目の前に ポトンと おちたものが、弾んで 自分の腹ばいになっている胸の前に転がり、それを探したのに、それがどこにも無かった、のは、別に作り話でもなんでもなく、ただ そうだったから そう書いただけのことで・・。

 生きていると 時々 理解に苦しむこととか、理屈で片付かないこととか、わけの分からないことなどが結構あって、だけど どうにも説明の仕様が無いし、話したところで 不思議なこととか、なんか あるんじゃないの?みたいな話になってしまうので、余り言わないのだが、でも たぶん どんな人にも そんなことの 一つや二つ あるのではないかな、と 思っている。

 子供のころにも 何回か 似たようなことがあって、あるとき そういう時は、自分の周りにちょうどあったポケットのようなところに、見失ったものが 落ちたのだ ・・なんて いつのころからか 思うようにもなっているのだが、まんざら 全くの作り事とも思えずにいる。

 でも まぁ、直に言えば、よく 物をなくしたり、さっきあったものを どこかへやってしまったりなんてのは、いまだにあることだし、それで ものすごく 嫌な思いをしたとか、困ったとかってのは 殆ど無い。引越しなどの時には、かつてそんな風に所在不明になった物たちにあえるのではないか と 期待などするのだが、これまで そういう再びの出会いは無かった。 しかし、まぁ それはそれで 特に問題とすることでもないだろう。

 それでも 先のことは 今に至るまで、気になっていることではある。

 昨日は 普通に掃除機をかけ、いつも 何も無い部屋は ことさら 何も無い状態になっていたので、気分良く 腹ばいになんかなって 本を読んでいたのだから、
 その 何も無いところに 窓も開けていないのに 突然 小さなものが落ちてきて、転がって・・ で、やっぱり 何も無いのだから、 ?? と おもって 当たり前ではあろう。

 家守綺譚の主人公 綿貫は、物書きなのだが、腕に止まったと思った小さな虫が ほくろになったことを、不思議なこと、妙なこと と 思いながらも、「まぁ いい。自分は 事実を書くだけだから、事実をそのまま書いているだけだ。」と その件を済ませている。

 べつに まねをするわけではないが、ほかに どうしようもない・・のもあるし、つまり そういうことなので そう書くしかない。

 生きていると いろんな 不思議なことがある。だから なんだ?というような そんなどうでもいいことにも、ちょっとした そんな小不思議があったりする。

 結構 だた 生きてるってだけで、こんなふうに たまに ちょっと おもしろかったりする・・。 

 

 

 

2 秋に鍛える (骨折1)

 台風一過、お約束のような好天。
二人暮しにしては 多めの洗濯物を 通常は朝なんか知らないというタコ氏を 無理やり起こして干してもらう。

 家事仕事なんて 人に指図してやってもらうほど 面倒なことはない。・・のだが、そうしなくてはならない事情が出来てしまったのだから、仕方がない。

 実は、それがあった日から すでに10日ほど過ぎた しとしとと雨の降る水曜日に、左足首を診てもらいに、バス停一つ分くらい先のクリニックにのたのたと出かけていった。

 何故、足首が腫れていたか というと、段差を踏み外した・・(というよりは おっこった、といったほうがいいかもしれない。)からである。
 場所はといえば、これが 庭に出るために三段ほど積んだブロックのところでのことだった。

 その日 タコ氏は めずらしく朝早く出かけ、自分にも 誰が来るという予定もなかったので、せっせと洗濯しまくっていた。で なんども 出たり入ったりを繰り返して、ようやく これでおわったー と、ほっとしていたら、あれ????というかんじで、いきなり すとんと 地面に座り込んでしまっていた。

 何が起こったのか まったく わからなかったのだが、入るべき所に背を向けた状態になっていた。それから 立とうと思ったのに、足に 全然 力が入らない。
 誰もいないし、さて どうしたものか と思いはしたものの、大体 半世紀以上も生きてくると 何が起こったところで とたんにパニックになるなんて よっぽどのことでもない限り ないものなのだ。

 立てないか、それなら こうだ、と ばかりに、腕の力で自分を持ち上げ、(これ、普通だったら 出来ないんですわ、だけど こういうときばっかりは出来ちゃうんですよねー。いわゆる 火事場の馬鹿力ってやつでしょうねー。自分、すごい!なんて。。) で、部屋の中に這い上がる。

 それから イスにつかまって どうやら 立ったものの、次の一歩が踏み出せない。
だけど その辺は もう 今自分は独りなんだ、と おもったら これが なんとかなっちゃうってのが、また おもしろい。

 とりあえず、すぐちかくに 救急箱もどきのひきだしがあるので、座って シップを貼った。で 一応、包帯なんか 巻いておいたのだが、おそらく それが多少良かったのかもしれない。

 それから、すぐに タコ氏にメール。『落ちた。足首湿布中。とりあえず動くけど』
タコ氏、すぐに 帰ろうか?という電話をくれたが、足をひねったからといって 戻ってきてもらっても、特に何するでもないし、仕事だしとおもって 帰りにシップを買ってくるよう頼んで、連絡終了。

 まぁ それから あれこれあったのだが、書いていると 面白いけれど 長いので、とりあえず そこまでにして、結局 なんだったかというと、全治一ヶ月の骨折だった。

 え〜〜〜〜?! 生まれて初めてです。と、お医者様に言えば、そうでしょうねー、でもね と 顔を近づけつ 背をかがめ、声を潜めて こうおっしゃる。
「これも 女性ならではの老化なんですよー。」

 あ そーですか、やっぱり。もう いい加減に 自分の年齢を自覚して、自重しろや というお達しであったのだ。 若い人たちといると、つい 自分も同じような錯覚を起こしてしまうけれど、「実は もう そんなこと 出来ないんだよー。」と 言われたというわけだ。

 丁寧で いい先生なんだけど、なんか そういわれたのが癪に障って(・・かどうか)ギブスか添え木かを選ぶ段になって、ギブスを勧める先生に「ギブス、やです。重いし、動きにくくなるし、お風呂はいりたいし・・。」なんて いっちゃって、添え木にしてもらった。
 ・・のだが、これも なにしろわずらわしくて、だから 一日のうち一回 どこかでつける程度になっている。

 しかし、老化というのは 確かなことなので、この不自由さをこらえつつ、今後は タコ氏を鍛えることにした。

 今のところ 彼ができるのは、米を研ぐこと。
 素ラーメンを作ること。たまに なにか入れることは考え付くらしいが、さほどのものを入れた形跡があったためしがない。
  そばをゆでる。これは ねぎつき。
  焼きそば。 あとは カップスープを作る・・くらいか。

 ここまで書いて あ これは、自分も良くなかったと 今 反省。

 手を掛けすぎていたんだろう。息子達は、自分が忙しかったために、おなかが満たされるのを人に頼っていられず、見よう見まねで食事を作ることを覚えたのだが、タコ氏には その経験がないのだ。

 座れば ご飯が出てくるという 暮らしを長年やってきた人には、こんな 非常事態になっても スーパーの惣菜を買ってくることしか 思いつかないのだ。

 それに タコ氏は 出されたものを残すことは 殆どないが、別に なければないで、目に付くものを 口に入れておくことで、それが たいしてうまくなくても おなかに満ちればいい というほうなので、積極的に 料理しようと思い至ったことがないのだった。

  これは まずいぞ。
・・というわけで、これから 料理ページに タコ氏の悪戦苦闘後の末を記録しようかなどと考えていたのだが、とりあえず その最初の成果を掲げることとなった。

 まだまだ、初期も初期の段階だが、これで 彼の人生の幅が ぐんと広がる(であろう)ことを思えば、多少の怒りと苦言の混じった叱咤激励であったとしても よく堪えて、一つでも多くの成果を挙げてほしいと 思ったりもしている。

 ・・とはいうものの、やはり これは 自分の怠慢でもあるなぁ・・と つくづく。

 はなから こいつには無理と思って 何も教えようともしなかったり、何をするにも いちいち はじめっから教えなくてはならない相手に、自分がしていると同じようなことを 要求しても そんなのどうしょうもないのだ ということが、まず 自分に分かってなかったり。

 くわえて、例えば それが仕事であったなら、まるで良く出来た人格者のように 何度でも何の抵抗も感じずに 丁寧に教えられるのに、単に日常のごく当たり前に日々行う事どもについて教えるとなると、なぜ こうも 苛つくのかわからないほど、タコ氏のするあれこれが 気にさわる。

 つまり 自分には 実は こらえ性がないのだ。・・・ ということに 気付いてしまった。
それは 結構 見たくないものを見てしまったようなところがあるようにも感じているのだが、まぁ それはおいといて(?) とにかく、タコ氏に 料理を教える ということは、自分の忍耐力を試されるような、そんな困難さに挑むことにも なりそうだ。

 南からの台風で、一気に花を咲かせた出入り口脇の金木犀が、甘くてやさしい香りを さらりとしたさわやかな風に届けさせてくれている。
 その中に、カビハイターのにおいが混じっているのは、風呂場掃除のいろはを 今 仕込んでいる最中だからだ。
 (そうなのだ、結局 これまで そんなことすらも 自分だけで やってきてしまっていたのだった!)

 さて、これから どうなっていくのか・・。楽しいような 恐ろしいような・・ ではある。

 

3 海まで (骨折2)

 前回の「2 秋に鍛える」から 数日後の昨夕、海まで出かけてみた。勿論 歩いて。

 結果は 特にどこがどうということもなく、さすがに久しぶりだったので、スムースに歩けない分、あちこち 問題の箇所とは関わりないところに負担がかかっての痛い思いはしたものの、とりあえず 一晩過ごした後の今になっても これという不都合は感じていない。 やれやれ というところ。

 本来 ぐうたらで、何をするにしても 面倒くさい と思ってしまいがちな自分だから、人ごみは嫌い、人と合うのもなるべく少なく、身支度を整えて あれこれして出かけるなんて、極力少なくありたい というのが 自分だと思っていた。

 が、どうも 自分は じっとしていることが 本当は 苦手らしい ということに、今回のことで気付かされた。
  昨夕より少し前に 実は 一度 買い物にも行きたかったこともあり、タコ氏と近くのスーパーに出かけたことがあった。

 その時は もう 本当に いい加減 じっとしていたり、家に篭っていることに 耐えられなくて、表に出たくて仕方がなかったため、買い物を口実に出かけたのだが、やはり 戻るころには くたびれてしまって、痛いんだか 疲れているんだか 良く分からない という そんな風だった。

 まだまだ しばらくかかるかなぁ・・というのが その時の実感だったのに、それから 二日しかたたない昨夕、やっぱり 表に出たくて、というより、狭い空間に居続けるのにいい加減飽き飽きして、出かける と 宣言したのだった。

 秋の日はつるべ落としとはよく言ったもので、まだ4時前だから と出て行ったのに、のろい歩みで、途中で買い物をしたせいもあり、目的の公園に着いたときには、もう 人もまばらで 風も冷たく、日もほとんど 淡いラベンダーグレーの雲に隠れてしまって、その輝きの名残りだけが もったりした雲の縁を彩っているだけだったのだが、それでも 久しぶりに海にこられたことで とても満足だった。

 対して長い時間ではなかったものの、タコ氏が稽古している間、むしゃむしゃと 買い物した春巻きなど食べ、時々 写真を撮ったりしながら、ベンチに腰掛けているだけで、コレまでの鬱々としたものが 消えていくのを 気持ちよく感じていた。

 思ったことと 思い出したことを それぞれ 一つずつ。

 思ったことは、歩くことが不自由になってから、自宅周りを歩いてみれば、これは もう この周辺は なんとも 歩きにくい ということ。

 小さな段差がいたるところにあり、比較的大きな段差にいたっては、なぜか 公園などにもかなりあって、また 道路の歩道の狭さや、人が歩くための道であるはずの歩道のはずなのに、ソレをよけて通らなくてはならない電柱などが 当たり前に歩道内に立っていて、これでは車椅子などは勿論、自分のように かるく足を引きずるようなものでも とても 歩きづらくて仕方がない ということが よく分かった。

 このあたりに限って言えば、道路に関しては 結構 長い期間水道工事をしていたため、最近は 綺麗に舗装されて車にとっては 申し分なく出来ているのだが、何しろ 人のためには まったく 不親切で、歩道と側溝と道に面している家々の出入り口との それぞれの細かな段差に いちいち足をひねりそうだった。

 これは 杖をつく人、カートにつかまって出かける人、歩き始めの まだ足の柔らない人たち、そして 車椅子の利用を余儀なくされている人たちにとっては、毎日 辛いことだろう と 実感した。

 葉山だけではなく 恐らく 日本のどこの町でも きっと同じようなことが 幾らもあるだろうと思うので、是非 是非、各市町村でも 快適な歩行のための道作りを奨励、実現してもらいたいと つくづく思っている。

 思い出したこと・・ まぁ これは どうでもよいのだが・・

 以前、夏の夜、遅くなって 昨晩歩いた道と同じところを歩いていたとき・・

 その時は 朝から天気が悪く、日が暮れるにつれて 生暖かい風が強く吹いていて、これはざーっとくるな と思って急いでいた。

 そんな天気だったから 辺りの家々も雨戸を閉めきって、いつもよりも 道は暗く、ほとんどひと気がなくて、自分の足音しか聞こえないほどだった。

 ふと、ずっとまっすぐに続く道の前方を見ると、なにか 青白いものが ぽつんと浮かんでいる。 それは 小さくて丸いものだったので、最初は 車のライトか とも思ったのだが、たった一つだけだったし・・、それに ふと 何かに思い当たるようにして 立ち止まれば、その青白いものは 少しずつ ゆっくりと こっちに近づいてくるとのが分かった。

 なんだろう?と いうのと、ひょっとして・・というのとが同時に思ったことだった。

 急いで 反対側の歩道に移動して、その青白いものを見つめながら ゆっくり前に進んでいったのだが、それは ふわふわと上下に小さくゆれながら 確かに こちらのほうへやってくるのだ。

 さて、困った!どうしたものか、回りの家は どこも 雨戸を閉め切っているし、小道に逃げ込んだところで、かえって恐いことになりそうだし・・ などと 思いながら なおも じっと見つめながら 様子を伺っていた・・   そして

 だんだんに近づいてくる その青白いものの様子が分かるくらいになったとき、ようやく それが うつむき加減の人の顔!だということに 気付いた。

 これは! やっぱり まずい、どこかへ逃げるか、そうだ 電話して タコ氏に報せよう、と 立ち止まって 電話を探したのだが、そういうときに限って かばんの中の電話が手に触れない・・・!
  心中 かなり焦って ごそごそと かばんの中をかき回すが どうしても探せない。

 一方、例の青白い顔は その間もゆっくり、ふわふわと上下に動きながら 近づいてくる! わー どーしよー・・・ と 思ったその時

 その顔が ふっと半分になった! と思ったら それは 大きな甲高い声で 言った。

 「あたしー! あのさぁ、さっきのつづきだけどぉ・・」

 いきなり脱力。

 きゃぴきゃぴの会話の断片であたりを散らかしながら、彼女は ごく当たり前に(当然だが・・) 反対側の歩道を こちらになど 目もくれずに 楽しそうに過ぎていった。

 ・・そう、中学生の女の子が 携帯のメールの画面を見ながら ゆっくり歩いていただけだったんですねー。

 しかし、あー こわかったっす・・ ほんとに。 久しぶりに あれは 恐かった。

 本人は 自分が人に どれほどの緊張を強いたかなんて まーったく 分かってないですよね。 でも しかし、確かに あれは  こわいですよー・・

 昨夕、タコ氏と返る途中、やはり 携帯を目の前に持って画面を見ながら歩いている女の子をみて、突然 思い足した ある夏の夜の出来事ではありました。

 

4 思いやり (骨折3)

 ちょっと 風はあったけれど、でも 気持ち良く晴れた 明るく青い秋の空には、たくさんの子ひつじたちが むやみやたらに群れているみたいな白いもこもこした雲が一杯に広がって・・、それを 楽しく眺めながら クリニックの外科に行ってきた。

 大事にしてください とか 余り無理をしないように とか言われたって、日常生活というのは じっとしていて すんではくれないのである。

 「タコ氏」なんていうからなのかどうか、夜行性生物には、朝って君にとっては毒なのかね?!と思っちゃうほど、こっちが どうなろうと 寝まくる連れ合い氏ではある。

 まぁ・・、朝の忙しいときに、ただその辺に ごろんとか ぼさっととか居られたところで、邪魔くさくて仕事にならないというのはあるけれど、それにしても こっちがこんな具合なら もうちょっと そう、思いやりってものがあったっていいんじゃないか と 思ったりもしたりして・・

 

 外科では、スターウォーズのヨーダのみたいな先生が、それこそ 微に入り細に渡って コレでもかというほど 粉々に砕きに砕いて くわしーく レントゲンをみながら 状態を説明してくださったのだが、・・つまり
 「大変良好である。」「だからって 無茶すると痛い目に合うからね。」「お酒は駄目!」「踏まれたり、ぶつけたり、ひねったり、転んだりしないようにね!」
  ・・と そういうことだった。

 お酒は駄目といわれても 前の晩 飲んじゃったし、踏まれたり、ぶつけられたり〜〜なんていわれても、もうすでに 娘のクリニックに付き添って(いや、傍から見れば 娘が付き添っているようではあったけれど・・)バスにも 電車にも乗ったし、買い物なんかもしちゃったし、そのたんびに 人の足がちかづいてきた!階段 降りるのが!あー 腰が、背中が・・! と ひやひやし通し・・ だったので、ははは・・と 力なく笑うしかなかったが、まぁ 恐らく 「幸いにして」 これまで なんでもなかったのだろう ということで。

 

 話を戻して・・。
 さて ここからが 今回のテーマのはじまり〜。

 クリニックを出た遠藤さんは、そうだ、クリニックのすぐ近くのパン屋に行って(末っ子のバイト先)なにか パンを買って帰ろう と 思った。
 で、そろそろ お昼になるころでもあったので、カツサンドとバケットのサンドイッチを買ったら、なにやら 抽選やってますというので、くじを引いたところ、リンゴの蒸しケーキが一個 当たった。 (ルン♪)

 テレテレ歩いて 戻ってくれば、出てきたときと 何の変化もない部屋のまま、タコ氏がいかにも 頭が働かなくてー みたいな感じで のそっと出てくる。
 (掃除の真似事だけでも してくれてたら・・などと思った自分が 寂しかったりして。)

 で、パンをお皿に乗せて スープと一緒にならべながら、これ、もらったんだよ と リンゴの蒸しケーキを見せれば、焦点の合わない目で チラッと一瞥、ああ というだけ。 

 昼食を食べ終わり、まぁ 十分 満腹したんだけど、ちょっと 甘いものがほしくて リンゴの蒸しケーキを 半分こにして、タコ氏の皿の上に半分 置くと、タコ氏、むしゃむしゃと食べる。

 ふうん、でもたべるのね、と 思いつつ、一口 自分も口に入れるが、やっぱり おなか一杯だったので、後で食べようと 袋に入れなおして テーブルのすみにおいた。

 その後、しばらくして 疲れてしまったのもあって、2階ですこし 寝てしまったのだが、目が覚めたら 少し 頭が痛い。

 しょうがないな、薬 飲もう、と 下におり、すきっ腹にはよくないから と 残しておいた蒸しケーキを・・・ 蒸しケーキ 
??!! 

 

 けが人の 楽しみに残しておいた リンゴの蒸しケーキの半分の さらに半分しかのこってなかったという そんな ちょっとのものすら、喰ってしまうのが タコ氏なのだ。

 それも そういうことなど 全然 気付かなくて という、ほんとに 気付かないから 救いようもないというのが タコ氏なのだ。

 さて、自分が タコ氏の立場だったら、と 考える。
けが人の 楽しみに残しておいた、リンゴの蒸しケーキの半分の さらに半分しか残っていなかったという そんな ちょっとのものでも、
自分の小腹満たしに喰ってしまった!のだったら、たぶん 自分だったら 即 買いに走ると思う。

 行った先は 分かっているんだし、そこに行けば売っているのも 分かっている。
わるかった と リンゴの蒸しケーキに入っている リンゴのちいさな角切り程度ほどでも思うのなら、やっぱ 買いに行くってもんでしょう。

 しかし、タコ氏は 遠藤さんではなかった、当然だけど。

 買ってくる? と 一言聞いただけ。 
なんか それをきいたら もう ほんっとに がっかりしちまって・・、さっさと 日干しにして するめもどきに してやるわ! と 本気で思った。

 

 思いやりって、気遣うことばっかりじゃない。

 けが人が楽しみに取っておいた リンゴの蒸しケーキの半分の(以下略)を 喰っちゃうことを 普通は しないけど、でも やっちゃったら、 あ ごめん といいつつ、(というか 言ったんなら) 買いに走るだろう??!! 普通は。 ま 普通じゃないけどさ。

 でも 世間一般では それを 思いやりって言葉で 表現することも あるんだよ!

 ・・ 怒ってみた。 

 けど タコは 目の前で 寝転んでいる・・ 今 そろそろ 夜10時。

 

 だから 現世なんて嫌いなんだ! と 自分は 来世を期待するんでした。

来世は きっと思いやり溢れる 暖かく 穏やかな心が いっぱいだと、信じている・・。

 ふてくされていたので、夕食も 適当に作って・・ だから 今 秋の夜長に 虫の音とともに、腹の虫が鳴いている・・ 

 タコのいびきに混じりながら・・。

 

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