B-Note X
B=子供の自然な基調音 Note=音;記録;書き記す;遠藤がおもいつくまま書き残していくもの・・・ B-Note=”美しいもの”の記録
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2009/01/02 正月二日
諦めの悪い奴ら
生命の軌跡 かつて ここに 瑞々しく潤う 緑の命が群生していた
黄金の一刻
素心蝋梅 (そしんろうばい)
春の女神 プリマベーラの密かな吐息が わずかな光と冷たい空気が 後じさりを促して眠りを誘うたのか 慎重なつぼみは 何かに怖気づくかのように ゆるゆると開く 日ごとに満ちゆく女神の思い
外は 氷雨 内は 春
望み
赤い椿の精 歌が聞こえる 小さな ささやくような澄んだ声は 冷たい風をすり抜けて ほら、歌が 聞こえる
不思議なことに 冬の椿は 赤ければ赤いほど 群れて咲いても 一つに見える
侵略の緑
気が付けば さて ご覧の通り。 果ては 一軒 包みこもうというか・・
梅染め時
その夕、何が気に入らなかったのか いきなり怒り出した風に追われて ここは? ここに隠れたらいいかしら? それにしても 何をあんなに怒っているのかしら? でも そのたびに 吹き飛ばされて あちこちに散らばされるのは ごめんだわ。 ね、海へ行きましょうよ。
行きましょう。 雲たちは 一つになって 西の海を目指し くたびれ果てた雲たちは
花に
時々 思うのだ 世界でいちばん最初に咲いた花からこっち 今に至るまで その ひとつひとつが そのために という 目的を持ったものなのだろう と 今 ここにある この小さな黄色い薔薇は こうして 手向けられるように という 目的を果たしているのだろう この 小さな庭に咲いた 小さな薔薇は そのはじめから
だから 時々 思うのだ 一つ一つのそれは すべて それぞれの命に寄り添って咲くから
霧の朝
開け放った窓から 霧が 流れ込んでくる 表を見れば いつも見える山々の姿も見えず ただ 静かに そっと 気付かぬうちに ひとつひとつに 分かたれていく・・ どこからか 光の気配がして 霧が降りれば 自身は ますます 不明となり・・
『ほんとうに、自分をすべてのものから 逆らいようもなく、そっとへだてる 暗さを知らないものは、
ずっと昔 そのような賢い者に なりたかった時のあったことを
『』中 ヘルマン・ヘッセ「霧の中」 高橋健二訳
ある夕景 一日中 燃え盛って くたびれ果てた太陽がもてあました残り日を 南に向かう豪気な一群れの雲が 一切合財 引き受けた
雨が降る 雨が降る 南のほうから 風が運んだ 幾千 幾満の 雨が降る
空気に溶け込み ずしりとさせて 重く 激しく 濃い雨が降る
熱のこもった 人肌温の雨が降る たくさんの 幾千 幾満のたくさんの 帰りたい 戻りたい 会いたい 抱きしめたいという思いになって
雨が降る 雨が降る・・ 体の痛みよりも もっと痛く 体の苦しみより もっと苦しく 体の辛さよりも もっと辛く
雨が降る 幾千 幾満の哀しい涙が 雨になって 南のほうから 風に運ばれ 今 降っている
お帰り・・ よく戻ったね ご苦労様だった やっと帰ってきたんだね・・
山に 木々に 緑に 花に 大地に 家々の屋根に 窓に 玄関に 海に 波に 浜辺に 磯に 道に 小川に 町に 街に
よく お帰り・・ ゆっくり お休み えらかったよ・・
雨が 降る 雨が 降る
熱のこもった 濃い灰色の雨が降る たくさんの 幾千 幾満のたくさんの 帰りたい 戻りたい 会いたい 抱きしめたいという思いが 雨になって
今日 雨が 降る・・
'09/09/06
夏の脱け殻
まだ 同じ枝に 当たり前に 息のあるものもあるというのに 曇天の夕暮れに それは 半分 眠りにつきながら 遺言をつぶやいていた
潔いほど 小気味良く こんな道端になんかに その形骸だけを残して
夏は 逝ってしまった・・
'09/09/06
灯りの時
09/09/08
ちいさな 唐辛子畑のそばを 通る 家の陰になった その畑には 整然と 活きの良い 瑞々しい 緑の濃淡が並び 小さな精たちは まっかな とんがり帽子だけをのぞかせて じっと固まったまま 私達が行き過ぎるのを 待っている
ごめんよ すぐに行くからね でも ちょっと 出てきて すこし一緒に 遊ばない?
「だるまさんが ころんだ!」
瞬間! クリスマスカラー畑が ぴりっと震えた
2009/09/23
灯りの時 2
犬のお店は そろそろ終わり ケーキ屋さんは あと1時間 天ぷら屋とフランス料理店は もうしばらく 明かりがついているはず・・
この 灯りが消えるころ あたりのひと気は失せて 虫の音の響き合う中 常夜灯ばかりが 夜を徹して うら寂しげな光を 放ち続ける・・
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